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第15話
夢をみた。
俺が高校生のときの夢だ。
あの頃の俺は恋に恋する馬鹿なガキだった。
本当の恋がこんなに苦しいとも知らずに。
「ねえ、ヒロってかっこよくない?」
「えークズそうじゃない?私は無理だわ。」
「2組と5組に彼女いるらしよ。」
「うわ、最低。」
女の子達が教室の隅でヒロをチラチラ見ながら噂話をする。
俺は本を読むフリをしてこっそり聞き耳を立てた。
彼女達の情報網はすごい。
俺の知らない情報を持っているかもしれない。
俺が話に集中していると、
「なに読んでんの?」
ヒロが俺の視界に飛び込んできた。
その顔には人懐っこそうな笑みが浮かべられている。
「こころ」
「へー、何それ。有名なやつなの?」
有名も何もこころは夏目漱石の書いた名作だ。
学校の授業でも触れられたのに覚えてないらしい。
たぶん現代文の授業、全部ねてるんだろうな。
「まあ、うん。夏目漱石がかいたやつだから。」
「あ、知ってる!なんか猫のやつ書いた人でしょ?」
「そうそう」
『吾輩は猫である』を覚えているのは家で猫飼ってるからだろう。
この前見せてくれた猫はあの猫みたいにふてぶてしい顔付きだった。
「なんかミツルって見かけによらず文学少年だよな。」
「見かけによらずは余計だよ。」
確かに俺は陸上部に入ってるからよく日焼けしてる。
どちらかと言うと帰宅部で焼けてないヒロのが本を読んでそうだ。
趣味も見た目も正反対な俺達が仲がいいのを周囲の人は不思議がった。
ただ、なんとなく会話の波長が合うから一緒にいる。
「ごめんって。てか、購買売り切れるから速くいこ。」
「やば、走るぞ。」
そう言って俺はヒロの手を掴む。
俺達は購買から遠い教室だから急がないとパンがなくなってしまう。
何も食べずに放課後の部活をするのはつらい。
「速いってば。」
俺は後ろでノロノロ走るヒロを引っ張って進む。
高校生でこんなに衰えていて将来、大丈夫なのだろうか。
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