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第26話
「どーぞ。」
「おじゃまします。」
俺は慣れた足取りでヒロの部屋にはいる。
玄関には何足か靴がごちゃついて置かれていて、それを避けながら進む。
ケーキを入れたコンビニ袋がカサリと音を立てた。
外は寒かったけど暖房をつけるだろう。
クリームが溶けてしまわないように冷蔵庫に入れたい。
「あのさ冷蔵庫借りてもいい?」
返信も待たずに俺は冷蔵庫へ向かう。
ヒロの部屋でシマさんを思い出させるものを持っていられるほど俺は図太くない。
はやくしまってしまいたくて足早に冷蔵庫を目指した。
「いいけど、何買ったの?」
俺は早歩きしていたのにヒロは真後ろにいて袋の中を覗き込まれた。
そこには普段の俺なら絶対に買わない苺ののせられたケーキがある。
ヒロは何にも言わずにそれをじっとみていた。
気まずい沈黙が流れる。
「ケーキ。」
俺はそう言いながら隠すみたいにそれを冷蔵庫にしまおうとした。
それなのに焦る手は上手く冷蔵庫を開けられない。
モタモタしていると
「それ、この前いっしょにいたやつに買った?」
その発言に俺の手は止まる。
ドキリとした、別にシマさんのために買ったわけではない。
それでもこれはシマさんを思い出して買った。
そんなことを見透かされて俺は黙る。
何も言わない俺をみてヒロは小さく舌打ちをした。
そして唇を押し当ててきた。
いつもははむようなキスから始まるのに今は舌が俺の口に強引に割り込む。
ヒロの煙草の苦味が口に広がる。
舌は俺の動きに合わせようとせずに動きまわる。
息継ぎできる暇さえない獣みたいなキスだ。
唾液が流れ込んできて苦しいのに、やめてくれない。
俺は抵抗しようと手を伸ばしたけど掴まれて、ケーキが床に落ちて潰れた。
酸素が足りず視界が歪む。
手が俺の頭を固定して逃げられない。
ぼやけた視界の中でジッパーを下げる金属音が聞こえた。
そして頭が解放される。
俺は酸素を取り込もうと口を鯉のようにパクパクと動かす。
と景色が反転して冷たい床の感触を感じ、その冷たさに俺は肩を振るわせた。
目の前には潰れたケーキが見える。
突然の動きに対応できないでいるとヒロの指が俺の服の下をまさぐった。
自分の肌の体温と違う温度に俺は動きだす。
ただ上に男が覆い被さっているから中々動けない。
「おい、やめろって」
俺がそう言ってもヒロはやめない。
ヒロより体感のある俺は下で必死にもがいてなんとか這い出そうとすると、徐々に出られそうになった。
でもヒロが俺の上に完全に体重をかけて腕まで掴まれて動けない。
抵抗できずズボンがずりおらされる。
気持ちとは裏腹に俺の陰茎は勃ちあがっていた。
俺を抑えていない方の手でヒロはそれを掴む。
痛いくらい乱雑に手を動かれてもヒロに慣れた体は反応する。
先走りが鈴口から漏れ出し、熱をもつ。
「あ、ん、やだ。」
ヒロの手は止まらずに俺のを触り、水音は増す。
熱い手のなかと関節の感触に血があつまり、体はどんどんと敏感になる。
体の内側から熱が迫り上がってきた。
ヒロの手に精をはきだす。
乱雑に触れたそこはまだ熱を持っていた。
イッたばかりで頭がボーッとしていると後孔に違和感を感じる。
そしてその違和感はすぐに圧迫感に変わった。
無理矢理ねじ込まれた指を押し出そうと内壁が動く。
それでも俺の精液を潤滑油にして早急に弱いところを目指して指が進められる。
痛い、いやだ。
痛みに耐え続けていると指が一点を掠め俺の体ははねた。
執拗にそこを押されて叫声をあげる。
「あ、ん、ああ」
先を急ぐみたいに指が追加されて押し広げられる。
2本は浅いところでバラバラと動かされた。
突然、指が抜かれて熱いものがあてがわれる。
そしてそれは確認なく俺に侵入した。
いつもよりも解されていない入り口は拒むように窄まる。
そんなこと関係なしにヒロは腰を進める。
酷い圧迫感と痛みが俺を襲う。
無理矢理押し広げられた中が熱い。
覆い被されているのと中からの圧迫感で呼吸が浅くなる。
痛みから目には涙が浮かんだ。
するとヒロは動き始めた。
腰を掴まれて動かれる度に床に体が打ちつけられて痛む。
顔は床を向いていてヒロの方が見えないから、怖い。
それでも俺の体は痛みの中に快楽を見つけ出す。
「やだ、やめろ、あ」
俺がやめてと言うとヒロの動きは激しさを増した。
こんな物みたいに扱われることに体よりも心が痛む。
なんとか抵抗しようと前と進むとヒロに引き戻された。そして、
「なんで、拒むんだよ。お前は俺が好きなんだろ!」
ヒロはそう言った。
その言葉を聞いた瞬間、俺の心は砕け散る。
ヒロは今まで俺の好意に知っていて利用してきたんだ。
薄々気づいていたけど実際に言葉にされるときつい。
場違いな笑みが溢れる。
そんな俺を無視してヒロは腰を振る。
冷たい床に何度も打ち付けられた体は赤くなっていた。
中にある陰茎が硬さを増していく、そろそろだろう。
目を閉じてこの行為が終わるのを待つ。
中に熱いものが吐き出されたのを感じた。
硬度を失った陰茎が抜かれる。
ごぽりと精液が溢れて足を伝い、生温い感触が残った。
荒い息づかいが背後から聞こえて近づいてくる。
俺は拳を握りしめて振り返った。
バキ
鈍い音とともにヒロが後ろに転ぶ。
目は見開かれ起きあがろうともしない。
「もう疲れた。お前とは合わない。」
俺の口からは聞いたこともないほどの冷たい声がでた。
冷えた頭とは違い拳がジクジクと痛む。
ヒロは俺をみるだけで動かない。
けど俺はそんなヒロをおいて服を着直して部屋を出た。
追っても来てくれないのは結局、俺はただのセフレですらない道具でしかなかったからか。
寒空の下、家を目指して進む。
家に着いた瞬間、緊張の糸が切れて涙が溢れる。
玄関先で電気もつけずにへたり込む。
あんなに酷く抱いてくれって願っていたのに、俺は傷ついた。
嘘でもいいから抱かれるときだけは優しくされたかったのが俺の本音だった。
今、気づいたって遅いことなのに。
強がって自分を守るためについた嘘の鎧が剥がされる。
「馬鹿だな。俺は。」
体中が痛い、そんな自分を泣きながら嘲笑った。
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