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第13話
*シンさん視点の話です。
「お前、つまんない音だすね。」
はっきり言ってハルの第一印象は最悪だ。
小学生にしてはドラムの叩けた俺は母のやってるライブハウスでよく大人と演奏していた。
この頃の俺は自分は天才なんだって本気で考えてた。
他の人には褒められたことしかなかった俺はハルの言葉にカッとなって言い返す。
「じゃあ、お前がやってみろよ!」
「いいよ。親父、ギターかして。」
ハルの指が弦を弾く。
音が俺の鼓膜を貫いた。
まだ拙くて決して上手いとは言えない。
けどハルの鳴らす音は、周りを引き込む力があった。
ハルの演奏に合わせて大人たちが演奏をはじめる。
こんなこと俺のときには、起きなかった。
本物の天才は俺をみて笑う。
「どうだよ。俺の演奏は?」
ハルは一瞬で俺の自惚れを打ち砕いた。
こいつ、みたいな音が出せたなら。
そう思ったのを悟られたくなくて俺は必死に言い返す。
「ところどこが雑だよ。下手くそ!」
今までは何となくやっていたドラム。
他の子供より少しうまいだけじゃ、満足できない。
俺はその日から音楽にのめり込んでいった。
ハルに負けたくない、あいつに勝ちたい。
そんな思いで、必死にドラムを叩く。
いつしかハルが俺の音楽のモチベーションになっていた。
そんな日がこれからも続くなんて俺は信じていた。
母が死んだ。
女手一つで俺を育ててくれた強く女性だった。
俺達の生活は決して楽ではなかったけど、母のお陰で俺は不便なく暮らせてた。
母は俺を育てるために相当な無理をしていたらしい。
日頃の過労から風邪をこじらせて、そのまま死んでしまった。
幼い俺にとって母はすべてだ。
そんな母を失って、俺は前みたいにドラムを叩けなくなった。
そんな俺をみかねてハルの父は俺をよく自分のバンド練習に誘ってれた。
この人に俺は救われたと思う。
練習の後にいつも俺のを様子を聞いてくれてた。
「最近、親戚の人とはうまくいってるか。」
「うん。大丈夫。ありがとうね、おじさん。」
本当は家に居場所がなくて辛かったけど、俺は強がってみせる。
心配をかけないためだ。
そんな俺を見透かしたんだろう。
おじさんは俺の頭を少し雑に撫でてくれた。
ずっと我慢してた涙が溢れる。
「真也、辛かったら言ってもいいんだぞ。まだ子供なんだ。変な気を使うな。」
俺に父なんてものはいなかったけど、おじさんは俺の父みたいだった。
この時間だけ、俺は素直になれる。
ハルはたまにバンド練習に来てた。
前と変わらず、俺に勝負を挑んでくる。
ハルの音はドラムを前みたいに叩けない俺を巻き込んでいく。
ハルに煽られて俺はムキになってドラムを叩いた。
このときは、母の死も忘れてハルに負けないとしか考えてない。
なんにも考えてなかっただろうけど、ハルは悲しみの底にいた俺を引っ張りあげてくれたんだ。
ハルとの隣は心地よかった。
他の人は俺を可哀想な奴として扱う。
けどハルだけは俺をライバルとして見続けてくていた。
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