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2話・1日目その2《ペアが決まる》

「ところで……」 あの金髪のYouTuber「ミツバ」が挙手をし、話し始める。 「あのカメラは何ですか?さっきからずっと、俺たちのことを撮っているみたいですけど」 藤原さんは、胸を張って説明を始める。 「ご説明が遅くなり、大変申し訳ございません。皆さんがこの島で奮闘される様子を、私が手配いたしました撮影クルーが記録し、メイキング映像としてショート動画にさせていただきます」 「それは、青春群像劇のような感じに仕上げるんですか?」 「はい!そうです。まさにそういう動画を予定しております。リサーチにリサーチを重ね、どのようなショート動画が今回の企画と相性が良く、多くのビューを獲得できるか検討いたしました」 よほど自信があるのか、藤原さんのテンションが上がる。 「皆さんの YouTube動画への誘導として、公式SNSより配信予定となっております」 その言葉を「ふーん」と聞き流すYouTuberたちの顔も、カメラマンは逃さず撮影していた。 「私どもとしましては、とにかく、世間の目を向けたいのです。ありとあらゆる手段を使ってでも……」 藤原さんの気迫に満ちた必死さが、伝わってくる。 「ショート動画でまずバズリ、再生回数を増やして、増やして、認知していただかないことには、当ホテルとしましても、なにも始まりませんので!」 「……いかにも広告屋って感じ」 藤原さんに聞こえぬ小さな声で、ミツバさんが悪態をついた……。 — 今回参加しているYouTuberは、全員がフォロワー数20万人を超える中堅どころだ。 いや、大学生としては充分に成功者といえるだろう。 中でも一番人気は「サイカワ」。 企画力が抜群で「〇〇しないで1日過ごす」や「〇〇だけで〇〇を作ってみた」で、お馴染みらしい。 今回も誰も予想しない企画を企てそうだ。 次にフォロワー数が多いのが、金髪で一番背の高い「ミツバ」。 得意分野はフェイクドキュメンタリー。 彼自身が「演者」であり、ミツバの魅力で再生回数を回しているといっても、過言ではない。 堅実な動画が人気なのは「ユーキ」。 おそらく王道のPR動画に仕上げてくるだろう。 サークルで利用したら、海でこんな遊びができる、森であんな楽しみ方もできる、と提案力に優れているはずだ。 それから、地理と歴史に詳しい「イタル」。 喋りが達者で、底抜けに明るい上に、知識が豊富。 島を探検しながら、地形などについて語らせたら右に出るものはいない。 最後は「ナーゴ」。 植物や生物について詳しく、とくに虫がめちゃくちゃ好きらしい。 昆虫採集が趣味で、今も虫取りアミを片手に持っている。 ……以上のことは、事前に配布された資料で知った。 僕は映画やドラマは好きだけれど、動画投稿サイトには疎いのだ。 そういう意味でも、今回はいい勉強になりそうだ。 「えーでは、あみだくじの前に、学生サポートスタッフから簡単な自己紹介を」 右端から1人ずつ喋り始め、僕の順番が回ってくる。 「大学3年、中川マナトです。映像学科なので撮影機材は扱えます。力仕事はあまり得意ではありませんが、頑張ります。他ではできない経験をしたいと思って、今回このバイトに応募しました。よろしくお願いします」 パチパチと、ささやかな拍手が起こり、次の学生スタッフへ皆の視線が移っていく。 5人の自己紹介が終わったところで、ユーキさんが大きな声で感想を述べる。 「ねぇ藤原さん、このスタッフさんたち、顔で選んだの?みんな格好良くてびっくりなんだけど」 確かに……。 僕以外、みんなビジュアルがいい。 「それは、フフ。ご想像にお任せしますわ」 藤原さんは、なぜか勝算を得たようなドヤ顔をした。 — 廊下に置かれていたホワイトボードが、ラウンジに運び込まれてくる。 そこにはすでに5本の縦線と、数本の横棒が書き込まれていて、下のほうが隠されていた。 「YouTuberの皆さんは、お好きな場所に名前を書き、合わせて横棒を1本足してください」 僕ら5人のスタッフは、選ばれるのを待つのみだ。 頭の中で、誰に当たったらうれしいだろうと考える。 虫はそんなに得意ではないから、ナーゴさんは勘弁してほしい。 サイカワさんは無謀な撮影が多そうだし、イタルさんは歩く距離が多そう。 ユーキさんが無難かな、と思いながらも、僕はクールな顔でホワイトボードを見ている金髪のミツバさんを、盗み見てしまう。 彼は横顔も、驚くほど綺麗だ。 「では一番左端にお名前を書かれた、ミツバさんから」 藤原さんが、赤いマジックであみだくじをなぞっていく。 「ミツバさんとのペアは、中川さんになります。あー、いいですね。うん、いい組み合わせです」 ミツバさんが僕を見た。 ペコリとお辞儀をした僕を、彼はただクールに見つめ返した。

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