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22話・6日目その4《打ち上げパーティ》

僕はミツバくんに我が儘を言った。 「僕が持参したカメラでも、この赤樹島を撮影したいから、自由時間を貰ってもいい?」 「マナトがそうしたいなら、いいよ」 「ありがとね」 僕は昼食用にバイキングのパンをいくつか持ち、彼に見送られて森へと入っていく。 万が一にも迷子になって迷惑を掛けるのは嫌だったから、灯台から離れすぎない場所で、当てもなくカメラを回して時間を潰す。 そして、頃合いを見てホテルに戻り、あとは部屋のベッドで天井を眺めて過ごした。 フェイクBLが撮り終わった今、僕は気持ちの持って行き場を失っている……。 — この島で過ごす最後の夜は、バーベキューパーティでの打ち上げだった。 初日のバーベキューとは、少しずつ食材が変わっていて、メインは焼きガニとかなり豪華。 場所も屋上ではなく、船着き場近くの海岸で行われた。 皆、撮影が終わった開放感で、はしゃいでいる。 飲んで、食べて、ふざけまくって、また食べて。 さすがにメイキングカメラももう回っておらず、彼らクルーも一緒にカニを頬張った。 噂によると藤原さんは仕事の都合で、昼過ぎの船で島を出たらしい。 誰と誰がチームを組んで撮影していたという括りは、もうなくなっていた。 皆で一緒になってスイカの早食い対決をしたり、なぜか腕相撲大会が始まったり。 僕も必死にその輪に溶け込み、余計なことを考えないよう努めた。 空の様子は刻一刻と、変わっていく。 真っ赤な夕焼けで満たされて、太陽は海へと溶けてゆき、森からは大きな満月が登って、夜空には星が瞬く……。 ふと気を抜いたら、その美しさに引きずられ、涙が流れてしまいそうだ。 「フロントの人が花火くれたから、やろうぜ」 ユーキさんが大量の手持ち花火をもらってきた。 彼はテキパキとろうそくを砂浜に埋めて、ライターで火をつける。 「ほら、マナトくんも。こっちこっち」 ユーキさんが手招きをしている。 ダメだ、ダメだ。 最後まで、楽しく愉快に過ごさなくては。 「ありがとう。うん、僕もやる」 僕は何気なさを装って、ミツバくんがいるのとは逆方向へ進み、花火を振り回す。 「綺麗!」 隣にいたナーゴさんが「これもあげる」と1本くれて、僕は両手で花火を楽しんだ。 かなりの本数があったけれど、僕らは次から次へと火をつけ、それを消費してゆく。 いつの間にか、バーベキューコンロは片づけられていて、今度はキャンプファイヤーのような焚火が始まった。 僕らは段々と疲れてきて、炎を眺めるために焚火を囲んで座り込み、まったりとし始める。 — 棒切れにマシュマロを刺し、火にかざしながら、イタルさんが言う。 「楽しかったなー、すごく楽しかった。それにいい島だった。俺たちってさ、高校生ぐらいからYouTubeに動画あげることに必死になってた面子でしょ?こういうThe青春って出来事に疎かったから、いい経験になったよ」 「本当に、楽しかったです。サポートスタッフの皆もいい人ばかりで、一緒に過ごせて幸せでした」 「え?ちょっと待って、ナーゴが、泣いてるんだけど」 「だって、だって……。帰りたくない。僕はずっとこの島で、このメンバーで暮らしたい……」 炎は赤く赤く燃え上がる。 僕と対角線上にいるミツバくんは何も発言せずに、ただ座っていた。 僕の頭の中には、この数日間が、短編映画のように蘇る。 知らぬ間に恋が始まって、溢れ出るほど膨らんで、最後は綺麗に燃えあがった……。 今は、その思い出を宝箱にギューギューと詰める作業をしている。 そして明日、この島を出るときに、その宝箱を地蔵岩の下に埋めてしまいたい。 だって、持ち帰ったら、苦しいのが分かっているから。 きっともう、ミツバくんと会える機会は訪れないのだから。 それでもこの島で、僕は成長した。 自分が男の子を好きだと言う気持ちを、フェイクのフリだとしても口に出せた。 それは僕にとって、大きな大きな出来事だった。 「え、なんで?マナトも泣いてるじゃん」 「い、いや、僕は。ナーゴさんのもらい泣きで……」 「なんだよ、それ。ほら、ミツバ、こっち来て世話してやって」 ミツバくんが立ち上がって、こっちに向かって歩いてくる。 「そういえばさ、2人のフェイクBL動画は無事撮り終わったの?」 「あぁ、無事に」 ミツバくんがそう答えた。 僕の涙は、まだ止まらない。 「俺もこの島に来てよかったし、フェイクBL動画も、すごく楽しく撮影できた。マナトは?マナトも楽しかった?なんなら、もう少し、フェイクBL続けちゃう?」 ふざけた口調で、けれど真剣な目でそう告げたミツバくんに、僕の隣にいたイタルさんが、ボソッと呟く。 「ミツバのそういうズルいとこ、ホント良くないよ」 その声が僕には聞こえた。 ミツバくんにも聞こえたかは分からない。 「そろそろ、部屋に戻るか。明日も早いし」 ユーキさんが告げた言葉に、皆は静かに頷いた。

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