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第14話:侵入する熱への諦めと許し ※

 私は、名残惜しさを感じながらも、内壁を拡張していた空き瓶をゆっくりと引き抜いた。  ズボ、ォ……。  粘着質な水音と共に太いガラスが離れると、ぽっかりと口を開けたその場所は、月明かりの下で、次の獲物を待つように(よだれ)を垂らしながら(あや)しく開閉している。 「はぁ……っ、はぁ……」  硬い異物がなくなった開放感に、ドノバンが荒い呼吸を整えようとする。  だが、安息など与えるつもりはない。  私は、限界まで充血し、赤黒く反り返った自身の分身を、改めて見せつけるように握りしめた。  血管が浮き上がり、ドクドクと脈打つ質量を、ドノバンの目の前へと突き出す。 「休憩は終わりです。……ほら、見てください」 「……ッ!?」  薄目を開けたドノバンの視界に、先ほどの無機質なガラス瓶とは決定的に異なる、熱を持った「生きた凶器」が飛び込んだ。  はち切れんばかりに膨張した圧倒的な存在感。  ただの物体ではない、内臓を食い荒らす捕食者のような生々しい威圧感に、彼の顔から血の気が引く。 「ちょ……ッ、待て、セルウィン……大丈夫か……? 本当に、入るのかそれ……」  ドノバンの制止など聞こえないふりで、私はその熱く猛った亀頭を、ヒクヒクと震える入り口に押し当てた。  ズヌ、ヌチュ……。  挿れるのではない。大きさの違いを身体に教え込むように、グリ、グリと、穴の周りを執拗(しつよう)に擦り付ける。 「……ん、ぁ……ッ! な、何……」 「ドノバンさんの後ろの口に、キスしてもらってるんです」 「は?」 「ほら、聞いてください。私の先端に吸い付いて……上手にチュパチュパしていますよ」  私は、溢れ出た愛液とポーションを潤滑油にして、張り詰めた亀頭の表面で、彼の入り口を塗りたくるように撫で回した。  結合部から響く水音が、言われた通りまるでキス音のように聞こえ、ドノバンの顔が赤く染まる。 「ばっ! 馬鹿か……ッ!」  ドノバンがたまらず腰を引こうとするが、私は逃がさない。  逆に腰を押し付け、カリ(くび)の段差を使って入り口の(ひだ)をグイ、と強引に押し広げた。 「あッ……!?」 「ほら、見てください。こんなに素直に開いて……」  私は、抵抗する入り口に先端をねじ込み、一番太いカリの部分をあてがって見せた。  ヌプ、と。  濡れた粘膜が、私の先端を食むように吸い付く。 「……先の方、美味しそうに食べ始めましたよ?」 「ちが、う……! そんな太いの、無理だ……ッ!」  必死に否定するドノバンとは裏腹に、私の先端を咥え込んだ入り口は、熱く脈打ちながら私を締め付けてくる。  その吸い付きの良さに、私は思わず熱い吐息を漏らした。 「はぁ……ッ。ドノバンさんの下の口、すごく気持ちいいです」 「な……ッ!」 「そんなに飢えているなら……安心してください。これから、お腹いっぱい食べさせてあげますからね?」  強烈な存在感が、入り口を完全に塞ぎ、圧迫している感触。  ドノバンは、信じられないものを見るように私の中心を凝視し、そして首を激しく横に振った。 「ウッ……! おい、そんなの、入りきるわけが……」  先ほどのガラスでの快感など吹き飛ぶほどの、物理的な恐怖。  彼の目じりに、恐怖による生理的な涙が浮かぶ。  ドノバンは本能的な拒絶で、開かれた脚を閉じようと太腿に力を入れた。 「閉じないでください」  だが、私は慈悲など見せず、彼の腰を高く持ち上げて逃げ場を塞ぐように固定し、抵抗する膝を割り開いた。 「逃げても無駄です。……これから、この太いのがあんたをこじ開けて、内臓の位置が変わるくらい奥まで入ってくるんですから」 「ひッ……!?」 「覚悟を決めて、力を抜いてください。……じゃないと、本当に壊れますよ?」    ズプ、リ。    先ほどまで擦り付けていた先端を、今度は逃がさず、蜜に濡れた入り口へと真正面から押し当てた。  円を描くように焦らしながら、一寸ずつ、その厚い肉の壁を割り入っていく。  じわじわと自身の腹の中が侵食されていく圧倒的な質量感に、ドノバンは絶望と快楽の混じったうめきを漏らした。   「ぐ、ぅ……ッ!」 「……っ、く……」  私もまた、その締め付けに息を詰めた。  さっきの瓶とは比べ物にならない、生きた肉の圧迫感。熱い。痛いほどに、狭い。  だが、ここで一気に突き入れては、彼が壊れてしまうかもしれない。  それに何より――この光景を、一秒でも長く味わいたかった。 「……目を開けて。見てください、ドノバンさん」  私はドノバンの腰をガッチリと掴んで固定すると、亀頭の張り出した部分を、狭い入り口にねじ込むようにゆっくりと押し進めた。 「ぐ、ぅ……ッ! あ、入っ……!」 「ほら、入ってますよ。私のモノを……こんなに欲しがって、飲み込んでいく」  月明かりに結合部が鮮明に浮かび上がる。  濡れそぼった入り口が、私の凶悪な大きさに合わせて限界まで引き伸ばされ、薄い皮膚の下の血管が透けて見えるほどに張り詰めている。  ズズ、ズチュ……と、重く湿った音を立てながら、太い血管の浮いた私の竿を、少しずつ彼の下の口が飲み込んでいく。 「ァぐッ……ッ! 裂ける、太いって……!」 「裂けませんよ。さっきの硬い瓶だって、あんなに上手に根元まで咥え込めていたじゃないですか。……私のこれも、大丈夫ですよ」  私は残酷なほどゆっくりと、腰を進めた。  そのたびに、ドノバンの体がビクン、ビクンと大きく跳ねる。  すると、それに連動して――彼自身の男根に結び付けられた『根付け』が、ゆらゆらと大きく揺れた。  カチ、カチ……。  革紐と屑石が、彼の下腹や太腿にぶつかる乾いた音が、水音に混じって響く。 「……っ、ふふ。いい眺めだ」  私は思わず笑みを漏らした。  侵入される苦しさにドノバンが腰を震わせるたび、私がつけた房飾りが、彼の怒張(どちょう)した肉茎にまとわりつく。密着する寸前、革紐と屑石が彼の下腹に叩きつけられる乾いた音が、ヌチュリと重い水音に混じって響いた。 「後ろを貫かれながら……前は私のお守りに(もてあそ)ばれて揺れてる」 「く……ッ! いい加減、その紐……外せッ……!」 「嫌ですよ。……だって、すごく似合ってる。あんたが、完全に私のモノになったみたいで」  半分ほど沈んだところで、私は一度動きを止め、内壁に私の太さを教え込ませた。  ドノバンの呼吸が整うのを待つふりをして、さらに奥へと進むための溜めを作る。 「く、ぅ……ッ、はぁ、はぁ……! 腹が苦しい……」 「まだ半分ですよ。……これから、一番太い根元まで、全部埋めるんですから」 「嘘だろ……これで、半分だと……?」  ドノバンが絶望に目を見開き、震える手を自身のへその下あたりへと伸ばした。埋まった私の圧迫感が気になるのだろう。  彼はその違和感のあるあたりを指先で恐る恐るなぞり、内側にいる「私」の存在と大きさを、外側から確かめるような仕草をした。 「……ッ」  その仕草が、私の理性を強烈に揺さぶった。  彼が自分の腹越しに私を感じ、その大きさに(おのの)いている。その事実にたまらなく煽られる。  ズヌッ。  思考より先に腰が勝手に反応し、意図せず奥へと滑り込んでしまった。 「あぐッ!? っ、痛……!」 「あ……すみません。あんたが、あまりに淫らな手つきで腹を触るから」  私は苦痛に顔を歪めるドノバンに覆いかぶさり、謝罪の代わりにその唇を塞いだ。  逃がさないように深く舌を絡め、口内を蹂躙(じゅうりん)する。  私はドノバンの手を組み伏せてシーツへ押しつけると、空いた方の手で、張った彼の下腹を優しくさすった。 「ん……ぅ……ッ、ふぁ……」  唇を離すと、ドノバンはとろんとした瞳で私を見上げた。  私は彼の腹の奥、先端が今まさに到達しようとしている位置を、親指でぐり、と押した。 「……ドノバンさん。ここ。……一番奥まで、挿れていいですか?」  問いかけという名の命令。  入るかどうかではない。彼自身の口から、イイと言わせたい。  ドノバンは涙目になりながら、私の瞳を見つめ返す。  もう、逃げられないことは悟っている。ならば、せめて自身の意志で迎え入れたいという、男としての矜持(きょうじ)か、あるいは諦めか。 「……はぁ、はぁ……。ここまで来たら……入れろよ、馬鹿野郎」  その言葉は、私への最高の招待状だった。 「……はい。いただきます」  私はドノバンの腰をさらに強く引き寄せ、残りの長さを一気に埋めに掛かった。    ズヌゥウウッ――!! 「―――――ッッッ!!!!」  ドノバンの首がのけ反り、声にならない絶叫を上げる。  限界まで広げられた内壁が、悲鳴を上げているのがわかる。  腹と腹が激しく衝突し、その間に挟まった『根付け』の硬い屑石が、二人の肉にゴリりと食い込んだ。  逃げ場を失った装飾品が、結合の衝撃で無様に押し潰され、熱い愛液を四方に散らす。  ポーションを吸って重くなった房飾りが、跳ね上がった彼の下腹と私の腹に挟まれ、逃げ場なくのたうった。 「い……ッ、あ……! あ゛……ッ! 重い、熱い……っ、腹が、壊れる……!」 「……っ、は……! ドノバンさん……」  私は、ドノバンの体を強く抱きしめ、その耳元で熱く(ささや)いた。 「あんたの中に、いる……っ。私が、全部……!」  繋がった。  物理的に、私と彼が一つになった。  誰にも渡さない。  誰にも触れさせない。  私は今、この瞬間、彼のすべてに、私という熱を埋め込んだのだ。

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