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16.
低い声が同じ単語を断続的に言い、頬を叩いているような気がした。
誰だろう。誰がそうしているのだろう。
「⋯しゅ⋯⋯が⋯⋯さん⋯⋯?」
薄目を開けその相手を見た時、一気に覚醒した。
あの時の客が帰ってきていたようだった。
今、何て口にしてしまったのだろう。今自分は犬なのに、何で人間の言葉なんて発してしまったのだろう。
ガタガタと震わせる。
「⋯⋯お前、何て言葉を口にした? お前は犬だろう。何で人間の言葉を喋るんだ」
思っていたことを客の怒りが全面に出た声音で言われ、びくびくと身体が恐怖で震える。
「俺が帰ってくるまで食い終わってもねえし、せっかく用意してやったのに、お前はそのことすらできないのか?」
「⋯⋯く⋯っ」
顎を掴んでは無理やり起こされ、そのまま顔を向けられる。
「それとも俺がいないと食わねぇとでも言うのか? だったら見ててやるから、食いな」
「⋯⋯っ!」
顎を掴んでいた手を今度は後頭部を掴むと、グッと下げた。
眼前には食べ残したドッグフードを見る暇もなく、口に入り込む。
「⋯っ、ふ⋯ぁっ、⋯⋯っ!」
自分のタイミングで咀嚼することができなく、どんどん入り込む固形物は、どんどん口の中の水分が奪われ、何とか喉に流しこもうにも張り付き、それに不快感を覚えた愛賀は、客の手から逃れようともがいたものの、その手は力強く、びくともしなかった。
下腹部に気を取られて途中で食べるのを止めなければ良かった。お仕置きとも呼べる行為を甘んじて受け入れなければ良かった。
深い後悔を募らせ、ごめんなさいと涙を零し、無理やりにでも口の中に頬張った。
時にはむせながらも、身体が拒絶反応を起こし、吐きそうになりながらもとにかく隙間という隙間に入れ込んだ。
口枷をされている方がだいぶ良いと思えた状況が終わりに近づいたのは、数えるぐらいになった時。
これらを口に入れればこの苦痛から解放される。
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