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17.

張り付く喉に無理やり押し込み、少し空いた口に数粒を入れようとした、その時だった。 「水も飲みたくなっただろ。飲みな」 頭をその隣にあった水に近づけさせる。 そのまま突っ込まれるかと思わず目を閉じたが、不意に動きが止まった。 恐る恐る目を開けるとすんでのところで止まっていた。 一体どういうことなのか。 さっきと違う対応に戸惑いを覚え、客の反応を伺ったが少し経っても何もしてこなかったことから、躊躇いがちに舌を伸ばして水をぺろぺろと舐めるように飲んだ。 ほとんど口の中で咀嚼したまま飲み込めずにいる固形物だったものが、ずっと欲しかった水を含んだことで飲み込みやすくなり、初めて知ったことに対し感動した時のような感覚を感じた愛賀は、忙しなく舌を動かした。 ある程度口の中の物がなくなった時だろうか。「残りのドッグフードを残さず食えよ」と髪の毛が抜かれるんじゃないかと思うぐらい引っ張って顔を上げさせられたかと思えば、もう片手で持っていたエサ皿を口の中に無理やり流し込まれた。 数えられる量ではあったが、思わぬものが急に入ってきたことにより喉に入り込み、思わずむせた。 が、間髪入れて水入りのエサ皿へ今度は顔を突っ込ませた。 突如として視界いっぱいに水が、と思っているのも一瞬で、鼻に口にと水が入り込み、すぐに息が出来ない状況に陥った。 それはまるで溺れているような感覚に近く、それは死に直結していることを意味していた。 怖い怖い。 迫り来る恐怖に必死になってもがいた。 先程の出来事で無意味だと分かりきっていたはずなのに、それでも抗おうとしてしまった。 が、それに気づかないはずがなく、加わる力にねじ伏せられ、観念した愛賀は入ってくる水を飲もうと試みた。

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