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「躾はこのぐらいにしておくが、『ごはん』の時はエサ皿を、『さんぽ』の時はリードを口に咥えてアピールしてもいい。その骨を外すことがあればな」 それは同時に愛賀の力量による客の気分ということだ。 特に外されることなくこのままでもいいと思えるものだが、外してくれるほどこちらのことを犬として信頼し、愛情持って接してくれるのかもしれないと思った時、客に褒められることをしようと決意した。 「次はボール遊びでもするか。散歩だけしていてもつまらないだろう」 そう言ってバッグからカラフルな色合いのボールを取り出して見せつける。 さっき持っていた鞭ではないことだけでも緊張が解れたようで、「わんっ」と心から嬉しそうに鳴いた。 「このボールを見てろよ。ほら取ってこい」 軽く投げたそれは半円を描いて愛賀の真後ろへと飛んでいった。 それを四つん這いで飛び跳ねるように駆け出していった。 しかし口枷をされているために、咥えて客の元へ持って行けない。 口枷越しに触れて「くぅん、くぅん」と鳴いていると、客が言った。 「何やってんだ。投げたボールを持ってこい」 「くぅー⋯ん」 「咥えて持ってこいって言ってんだ。そのぐらいのこと出来るだろ」 咥えることが出来ないから鳴いて助けを求めているのに、無理を強要してくる。 そこでまた新たな越えられない壁に悩まされることとなった。 咥える以外でどうやったら持って行くことが出来るか。 先ほどのタオルを持って行こうとした時のことを思い出す。 咥えれば簡単に持って行くことが出来るそれも前足を使って持って行った。 その時はそうやっても叩かれたりはしなかったことから、それと似たようなことをすれば大丈夫ということか。

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