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だがタオルとは違って、安定性がない。 ただ乗せることしか出来ない前足に乗せて移動させようとしても、落とす可能性がある。 何度も失敗を繰り返しているうちに痺れを切らした客から罰を与えられかねない。 この方法は無理そうだ。じゃあどうすればいいのか。 刻一刻と迫られる決断。こうしている間にも客は自分が投げたボールを持って戻ってくる従順な犬のことを待っている。 焦りが募る。早くしないとまた痛いことをされる。 無意味に口元もとい口枷でボールを転がしていた時、急にハッとした。 こうやって転がして持っていけばいいのでは。 咥えて持ってこいとは言われたが、今の愛賀では出来ない苦渋の決断。 一か八か。 目の前で転がしていたそれをそろそろと転がしながら歩き出した。 「早く」と急かす声に怯えながらも、気を抜けばどこかに行ってしまうボールをなるべくこころを落ち着かせて転がしていった。 ところが、ちょっとした弾みでやや勢いで転がって行ってしまった。 ハッと顔を上げ、すぐに追いかけようとした目線の先は、腕を組んで仁王立ちしている客の足に当たった。 怒られる。 抑え込んでいた恐怖が溢れ、自分でも分かるぐらい身体中を震わせ、顔色を伺うように見ていた。 「⋯⋯ご主人の元へ持って行くことも出来ないのか」 しゃがんで足元にあるボールを拾い上げ、立ち上がった。 「お前は本当に世話の焼けるやつだな」 ため息混じりにそう言い、一歩一歩近づいてくる。 今手に持っているのはボール。 しかし鞭のように怖く感じるのは、客の纏う雰囲気の影響だろう。 近づく度、震えが強くなり、心拍数が上がっていき、それのせいで吐き気も覚えた。 ぶたれる。

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