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33.
「く、くぅん」
どうしてと困惑した愛賀は駆け足でその後を追い、足に縋った。
「急にどうした。危ないだろ」
「くぅん、くぅん」
「もしかして寂しいのか?」
「くぅーん」
そう言われて、ハッとした。
一度客が出た際は、躾を兼ねて前は栓をされ、その前に怒らせてしまったのもあり、困惑と畏怖が渦巻いていたが、教えてもらった躾をきちんとできたら褒めてくれ、こうしたら怒られるんじゃないかと思っていたことも怒られたりせず、むしろ可愛がってくれて、それがいつしか離れたくないという気持ちが現れたのだと素直に納得した。
「そうかそうか、そう思うほど俺に懐いたということか」
しゃがんで両頬を手のひらでぐりぐりと撫でる。
口角を上げるその表情は愛賀の目には嬉しそうにしているように見え、その様子に心が満たされていくように感じられ、目を細めた。
「俺もいつまでもこうしていたいが、時間が来てしまった。だから俺がまた来るまで大人しく待っているんだぞ。いいな」
「⋯⋯わん」
「そんな声で鳴いて。可愛いヤツめ」
ひと撫でをすると忙しなさそうに後ろを振り返ることもなく出て行った。
ご主人は離れるのが寂しいと思わないの。
腰を下ろし、前足を揃えて出て行った扉を寂しげに見つめ、悲しく鳴いていたのもしばらく。諦めた愛賀はその場を落ち着かなさそうにうろうろとしていたが、身を丸めて目を閉じた。
ご主人、早く帰ってきて。
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