14 / 18
第14話白狼の王と魂魔石
ソーンとセリアン、そして白狼の一族達と別れた帰り道、ヴェルグラスの町へ戻りながらカイはポツリと呟く。
「本当に……白狼の一族を捨ててしまって良かったのか?」
(スノウは俺が群れだと言ったけれど……)
縋るような眼差しで、カイはスノウを見つめた。
スノウは不思議そうにカイを見つめ返す。
「捨てたりしてないよ?」
「え?」
「俺は誰も捨てたりしない」
「……でも」
カイが不安に思う気持ちが伝わったのか、スノウは穏やかに微笑む。
「カイはたぶん、人間の王をイメージしていると思う」
「違うのか?」
「違うよ。白狼の一族にとっての王は、群れを導く者。野生の狼の群れと同じように、俺達の一族は元々狩猟しながら旅をしていたんだ。スカフレンニグルに定住するようになったのは、俺の祖父の代からだと聞いている」
「……狼の群れ……」
「そう。狼の狩りがイメージしやすいかな? 獲物を見つけ、群れを導き狩猟する狩りのリーダー。それが王。白狼の一族の王は、国を持たない。小さな家族という群れの集合体を導く者。だから番という家族がいる場所が王の群れ。俺がカイの側にいることは当然だよ」
「家族が……群れ……」
「白狼の一族は国を持たないから。場所に縛られたりしない。どこに居ても、群れの一員である事に変わりはない。たぶん俺の王としての役目は、父さんの呪いで獣に変えられた皆を、元の姿に戻す事だったんだと思う。全てはカイのおかげだよ。カイ……ありがとう」
カイは照れくさそうに俯く。
「礼を言われる程の事はしていない。俺はただ……仕事をしただけだから」
カイは胸元のポケットに収まるララが、隠すように大事に抱えている魂魔石 を見つめる。
ララはカイが魂魔石 の記憶に囚われないように、守っているのだ。
「俺の方こそ……一族の魂魔石 を取り戻す事が出来た。きっと記憶の持ち主は、安心して眠ってくれると思う」
「……そうだね。きっとカイが持っていた方が良い。もう誰にも狩られる事はないから……」
ヴェルグラスの町に入る直前、カイは宵闇の精霊狐の特徴である九本の尾を隠そうと、ララに残された人工魔石を砕くように頼んだ。
魔力がある程度戻れば、目眩ましの魔法を維持できる。
「ララ、人工魔石を砕いてくれ」
「キュウ」
任せろと言いたげに、コートのポケットの中でララが声をあげた。
「キュキュ?」
「どうした? ララ」
カイがポケットの中を覗き込もうとした時だった。
ララが抱えていた魂魔石 が、突然光を放つ。
煌めく光はカイを包み込み、やがて静かに光は消えた。
「魔力が……戻ってる」
驚きながらカイは目眩ましの魔法を発動した。
隠された狐の耳と九本の尾を見て、スノウが微笑んだ。
「カイの気持ちが魂魔石 に伝わったんじゃないかな? 」
「そうかも知れない……そうだったら……良いな……」
ともだちにシェアしよう!

