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第15話もう諦めて、番になってよ?
ヴェルグラスの町から再び王都まで、半月に渡る長旅の末カイとスノウは、ララと共に我が家であるカイの魔石店に戻って来た。
「カイ様、スノウさん。ララさんも。おかえりなさい」
店に戻ると、ほっと安堵した表情のキキが迎えてくれた。
「はい、キキちゃん。約束のお土産だよ」
スノウは行きよりも多くなったお土産を手渡す。
「ネーヴェの他に、ヴェルグラスの町でもお土産買ったもんな」
カイが疲れて宿屋で寝てる間に、スノウはしっかりとヴェルグラスの町でも、キキへのお土産を買い込んでいた。
「これは俺から」
「まぁ、カイ様も。お二人ともありがとうございます!!」
お土産の髪飾りとリボンを手にして、キキはとても嬉しそうだ。
「うん。キキに喜んで貰えて嬉しい」
「キュー」
ララもいつの間に拾って来たのか、綺麗な天然石をキキに手渡す。
「ララさんもありがとうございます!!」
たくさんのお土産を手にしたキキの笑顔は晴れやかで、カイはやっといつもの日常に戻って来た安心感で、満ち足りた気持ちになった。
「あ〜やっと帰って来れたよね~」
それはスノウも同じだったようで、穏やかな笑みを浮かべていた。
その日の晩、賑やかな夕食も終わり、それぞれが自室に戻った頃だった。
カイが自分の部屋で就寝の準備をしていると、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「カイ、もう寝ちゃった?」
ドアを開けひょっこりと顔を出したのはスノウだ。
「いや……まだだけど……どうした?」
「うん……言いそびれちゃったんだけど……旅の間中、ずっと考えてた」
どことなく緊張した面持ちのスノウに、カイもビクリと肩を震わせる。
(スノウは……何を言い出す気なんだ?)
自宅まで帰って来て、ほっとした顔をしていたくせに、やはり別れて来た白狼の一族が気になるのだろうか?
カイのアメジストの瞳が不安で揺れる。
「カイ……」
カイの名を呼ぶスノウの声音も、震えていた。
「……もう諦めて、番になってよ? ……俺はカイしか愛せない……」
カイは大きく目を見開くと、視線を逸らした。
狼獣人は一度番と定めた者以外、生涯番う事はしない。群れの中の秩序を守る為に、番以外は求めないのだ。それは群れがなければ生きられない、狼獣人の本能でもある。
それを知っているからこそ、カイは頷けなかったのだ。
「俺が番になったら……スノウは縛られてしまう。あんたの未来を、俺は奪いたくなかったのに……」
ポロリとカイの瞳から涙が溢れる。
「スノウはやっと自由になれたのに……どうして?」
「知ってるでしょ? 本能には逆らえないって。それにカイを縛り付けるのは、俺も一緒。俺はカイを絶対に手放せないから、逃げることは出来ないよ?」
スノウはカイに向けてそっと両腕を伸ばした。
抱き寄せられて、カイは素直にスノウの腕の中に収まる。
「カイ……番になって欲しい」
カイの耳元で囁く声は、怯える子供のようだった。
いつもよりも緊張しているのか、スノウの心臓の鼓動が早い。
(……本当に……俺で良いのか?)
不安で揺れるカイの目に映るスノウも、普段の自信たっぷりな余裕は感じられなかった。
「お願いだから……番になってよ」
(……俺も……覚悟を決めよう……)
カイはスノウの背に腕を回すと、スノウを抱き締める。
「……うん……」
頷いた返事は小さな声だったけれど……
スノウは驚きで大きく目を見開いて、大輪の花のように破顔した。
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