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60.乱暴な告白

 切れ長の細い目から落ちて来る涙。俺はそっと手を伸ばしてそれを親指で拭った。  ルナは声を出さずに泣き続け、ドサっと俺の上に体を預けた。  なんちゅー乱暴な告白だ。  あんな告白で落ちる奴なんているの?ってぐらい乱暴で、怖くて、無茶苦茶な告白だった。  それでも俺の上で泣き続けてるルナを突き放す事はせずに左腕で軽く抱き締めて、右手でピンクの髪色の頭を撫でていた。  それが出来たのは本気の告白だと分かったからだ。ルナはふざけてなんか無い。  本気なんだって分かっちゃったからだ。 「クソッ伊吹のクソッ」 「ルナ、ごめん。ずっとお前がふざけてるんだと思ってた」 「結婚してくれたら許す」 「えー、じゃあ許してくれなくてもいっかな~?」 「ああ!?テメェそこはルナのお嫁さんになるから許して~♡だろうが!空気読め!」 「だから何で俺が嫁なんだよ!嫁になるなら女顔のお前だろ!」 「お?何だよ、俺の事を嫁に欲しかったのかよ。どうしてもって言うなら俺が嫁になってやってもいいぜ?」 「いやいや、違う!違うから!てか何でお前そんな偉そうなの!そんなんで好きになって貰えると思ってんのかよ!」 「思ってるよ。伊吹ならどんな俺でも愛してくれるって自信あるし♡」  ふと、泣き顔のまま笑顔を見せるルナ。  強がりやがって。でもルナがそうしてくれて助かったな。またいつものように言い合えるようになったし。  そしてイケメンはどんな顔してもイケメンなんだな。  もう泣き止んだけど、まだ泣いてたのが分かるその顔は、少し色っぽくも見えた。  さすが女顔だな。俺がゲイだったなら大盛り上がりだったろうな。  そんな事を考えてると、ルナはまた表情を曇らせてさも不機嫌そうな顔して言った。 「それなのによぉ、他の男になんか惚れやがって!しかも客だぞ!?あり得ねぇ!騙されて泣くのは伊吹なんだぞ!?」 「…………」  ルナの言葉が心に突き刺さった。  俺は尚輝くんに惚れてるのか。客なのは間違いない。客の言う事は9割嘘って教えたのも俺だ。騙されて泣くのは、俺?  俺は尚輝くんに騙されてるのか?  でもとてもそうは思えない。毎週あんな大金払って会いに来てくれてるのに、尚輝くんの話す事が嘘とは思えない。  いや、思いたくないだけなのかも。  俺は尚輝くんの事が好きだから、ルナみたいに好きな人にフラれるのを認めたくなくて、尚輝くんの全てを無理矢理信じようとしてるのかも。    てかさぁ、俺って尚輝くんの事、そういう好きなんだなぁ。だから家にも連れて来たし、連絡先も教えたんだな。  男なのに、好きになれるんだなぁ。 「おい伊吹!何ニヤけてんだ!」 「ハッ!!」  尚輝くんの事を考えてたら、一瞬ルナの事忘れてたよ!  危ね危ね。俺は緩んだ顔を戻そうと顔を押さえると、ルナはため息を吐いて俺の上から退いた。  解放されたけど、俺はそのまま床に寝転がったままでいた。 「ったくよ、大きな声出したら喉痛くなっちまったぜ」 「てかお前明日も仕事?帰らなくていいのか?」 「午後から予約入ってるよ。マジもうやる気ねぇ。会ったら速攻ホテル誘って金巻き上げるしか考えらんねぇ」 「それなら帰った方がいいだろ。もう遅いし」 「なぁ伊吹、これだけ聞かせてよ。俺の事嫌い?」  「好き?」じゃなくて「嫌い?」だったから、すぐに言葉が出て来なかった。  ルナにしては弱気なその質問に、俺は素直に答える事にした。 「嫌いじゃないよ。めちゃくちゃな奴だけど、頑張って稼いでるし、何だかんだお前と酒飲むの楽しいからさ♪」 「だったら俺と結婚しろよ!腹立つなぁ!」 「だから男と男じゃ結婚出来ねぇだろって」 「伊吹、今日は帰るよ。これ以上言っても馬鹿な伊吹には分かって貰えないみたいだからな」 「馬鹿って付けなくてよくね?」 「お前が俺の嫁になったら付けないでやるよ。じゃあな馬鹿伊吹~」  どこまでも上からだな。  それでも俺は今ルナに対してムカつくとかそう言う感情は湧かなかった。    それよりも尚輝くんを好きだと自覚してしまった事の方が大きかった。  まさかルナに気付かされるとは思わなかったな。  はぁ、これから尚輝くんとどういう顔して会えばいいんだよぉ。

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