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61.忘れていた取り立て

 尚輝くんの事を好きだと自覚してから数日が経ったある日、あれからルナからの連絡はピタリと無くなった。  別に前に戻っただけなんだけど、あんな話をした後だったから少しモヤモヤはしていた。  乱暴な告白ってかプロポーズ?の他にもあいつは仕事で悩んでるみたいだった。かと言って俺が何かしてやれる訳じゃないから考えても無駄なんだけどな。 『伊吹さん、起きてますか?俺は勉強をしていました。今は少し休憩してます』  離れて行ったルナとは反対に、尚輝くんとはこうして毎日のようにメッセージのやり取りをしていた。内容は本当に些細なものだった。  それでも俺は、尚輝くんからのメッセージを受信すると、心が躍り毎回内容を見るのが楽しみになっていた。  そしていつの間にか時間も忘れてメッセージに夢中になっていた。 『起きてたよー。勉強お疲れ様♪頑張るのは偉いけど、ほどほどにな?』 『はい♪伊吹さんからのメッセージで元気が貰えるので、勉強がはかどります♪』  可愛いな♡  俺も元気貰えるよー♡    っと、ここで仕事の方のメッセージを受信したと連絡が入る。  ずっと尚輝くんとやり取りしていたいけど、仕事もしないとな。でも尚輝くんを好きだと分かってから気が進まないんだ。  この数日間、何人かと疑似デートをしたけど、何だか尚輝くんに後ろめたい事をしてるようで、気が進まない時があった。  とは言え、尚輝くんのお陰で気分が明るくなって前よりも割り切ってやれるようになった気もする。  客の前では明るく振る舞い、話をよく聞き、相手の希望に添えるようなデートを心掛けてる。  前と変わらないようでも、自分自身の気持ちが違った。  ちなみに尚輝くんには俺の気持ちはまだ伝えていない。  伝えるにしてもどうやって伝えたらいいのかなんて、男相手には初めてだから分からなかった。  そろそろ寝る準備をしようと思っていると、店の方の客からのメッセージが届いた。 『伊吹~!給料入ったぞ♪会えるの楽しみにしてるぞ♡』  ブルータイガーさんからのそんなメッセージに、俺はハッとする。  すっかり忘れてた!立て替えておいた金を取り立てに行かなきゃだった。  前に写メったタイガーの免許証の住所を確認する。うーん、行けなくはない距離だな~。  尚輝くんと繋がりがあるからなるべく会いたくなかったけど、金は大事だし、明日のお散歩マダムの後にでも行ってみるか!  俺はタイガーにこうメッセージの返信を入れておいた。 『バイトお疲れ様♪無駄遣いしちゃダメだぞ?』  俺は誰がどう見ても無難だと思うような内容を送っておいた。  タイガーが予約入れるならそこで返してもらえばいいし、このままタイガーのとこに取り立てに行ってもこれなら誰にもバレないだろ。  問題は時間だよな。あいつ一応学生だし、出来れば昼間とかに取りに行きてぇんだけど、難しいかな?  でも店のメッセージで時間を決めるようなやり取りは避けたいから一か八かで自分のタイミングで行ってみる事にした。  そう言えば、尚輝くんからはタイガーの話が出て来ないけど、二人はどうなったんだろ?  相変わらず友達続けてんのかなぁ?  尚輝くんは俺とタイガーの事知ってるけど、タイガーは知らない。うーん、尚輝くんの性格だと黙って友達続けそうな気もするよなぁ。  あんなに友達が出来て喜んでたもんな。  純粋っつーか、なんつーか。  そんなとこも良いんだよなぁ♡  友達を捨てて生きて来た俺には無いところだから羨ましいとも思う。  寝る前に次の土曜日の予定を見て少し悩む。  もちろん尚輝くんで埋まっている。  毎週決まって収入があるのは有り難いけど、相手が尚輝くんで、尚輝くんへの見方が変わってしまったから少し悩んでいた。  このまま店を通して会ってもいいのか?  何か違う気がするんだよな。  んー、でも今このデカい収入が無くなるのはちょっとなぁ~。  万が一、尚輝くんが9割嘘の客だったらと思うとゾッとする。  それを考えたらやっぱり何も言わずに土曜は予約を入れ続けてもらった方がいいのかもな。  寝室のベッドに横になり、ペンギンを抱き抱えて目を閉じる。  こんな風に思っちゃってごめんな尚輝くん。  今は疑いの気持ちもあるのは仕方ないよな。  でもさ、会えるのは本当に楽しみだよ。  俺はペンギンを抱えたまま眠りにつくのだった。

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