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62.寝起きのタイガー

 お散歩マダムと1時間の散歩を楽しんだ後、昼過ぎに俺はタイガーの住むアパートを目指していた。  ここからそう遠くはないから歩いて行こうと思う。  学校が近いのか若者が多く歩いているように見える。  駅から少し離れているから背の高い建物は少なく、コンビニやドラッグストアなどがあるだけで、公園や緑も多い住宅街だった。    しばらく歩いてると、一軒のアパートにたどり着いた。免許証の住所だとここだ。  普通の二階建てのアパートに見える。  ここにタイガーが住んでるのか。  202って事は二階か。俺は階段を登って二階にあるはずの202号室を目指す。  ここだ。外からじゃ何も分からないけど、免許証が偽造されてなければこの扉の奥がタイガーの住処だ。  俺は躊躇う事なくインターフォンを鳴らす。  しばらく押しても応答なし。やっぱりこの時間はいないのか。  んー、こう言う時電話出来たらなぁ。  いや、タイガーとはこれっきりだし、教える必要はない。ここにいても無駄だし、近所迷惑だからまた出直そうかと思った時、ガチャッと音を立てて扉が開いた。  そして中から寝癖だらけのいかにも寝起きって感じのタイガーが姿を現した。  え?これモニターフォンじゃねぇの?これカメラだよね?直接扉開いたけど、こいついきなりドア開ける派なの?  いきなり開いたドアに驚きつつそんな事を考えてると、俺だと分かって眠そうな顔してたタイガーは満面の笑みを浮かべた。 「伊吹~♡来てくれたのか~♡」 「金取りに来たんだよ。用意出来てるんだろうな?」 「まぁお茶でも出すから上がってよ♪」 「いや、ここでいい。すぐ帰るから」 「えっ!帰んの!?ゆっくりしてけよ~」 「ゆっくりする必要ねぇだろ。ほらさっさと金返せって」  俺が右手の平を上にして差し出すと、タイガーは何を思ったのか、その手をガシッと掴んで自分の方へ思い切り引いた。  突然の事でバランスを崩した俺は、そのままタイガーの胸へぶつかってしまった。 「何しやがる!離せっ!」 「まぁそう焦らずに~♪」  そう言いながら俺を強く抱き締めながら開いていたドアをガチャンと閉めて鍵を掛けた。  ひっ!閉じ込められた!  そしてタイガーは、俺を深く抱き締めてスゥゥゥッと鼻で息を吸った。 「はぁ♡久しぶりの伊吹の匂いだぁ♡」 「変態っ!お前何考えてんだよ!」 「だってさ、伊吹と会えなくて寂しかったんだもん」 「そ、そうか、とりあえず離してくんね?今プライベートなんだわ」 「そうなんだよ!そこだよ!店を通さずに会えるってのがまたいいんだ♡あ、散らかってるけど上がって~♪実は今起きたばっかでさ~」 「上がらねぇよ!帰るからさっさと金返せって!」 「伊吹~♪俺に隠してる事あんだろ?ちょっとその事話そうや」 「はぁ?ねぇよそんなもん」  てか隠し事なんて客との間には当たり前のように存在するから、俺は特に気にする事なく強気に言ってタイガーの腕を振り払った。  タイガーは笑顔のままだったけど、さっきまでとは違って大人しくなった気がした。  そしてタイガーは自分のスマホをいじって画面を見せて来た。  写メらしく、タイガーともう一人黒髪の男が写っていた。 「……!!」  良く見てみると、タイガーの横に写ってる男は俺の良く知る尚輝くんだった。  そうだった!こいつら友達だったんだ!  隠し事ってこの事だったのか!  てかタイガーがこの写メを見せてくるって事は尚輝くんが話したのか。 「その反応はこいつの事を知ってるみてぇだな」 「…………」 「こいつとは最近仲良くなったんだけどよ、めちゃくちゃ良い奴なんだ。俺の話もちゃんと聞いてくれるし、一緒にいて楽しいんだ」 「…………」  俺はただ黙ってるしか出来なかった。  タイガーは無言の俺をチラッと見てニコッと笑った。 「俺とこいつの話聞きたくね?だって、土曜の客ってこいつなんだろ?」 「……少しだけ上がるよ」 「いらっしゃい♪」  正直、タイガーと尚輝くんが何を話したのか気になった。別に尚輝くんの事を好きだと自覚する前だったら放っておいたけど、今は別だ。  二人がどうなったのか知りたいんだ。  俺は靴を脱いでタイガーの家に上がった。

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