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63.気の合う友達だから

 タイガーの住むアパートはワンルームだった。  入って右手にトイレ、左手に洗面所と風呂があり、入った突き当たりのドアがもう部屋で、キッチンと一緒の空間になっていた。  一人暮らしの学生なら十分なのかと思う。  だけど、タイガーの部屋はテレビ、テーブルの他にいろんな物で溢れ返っていてかなり汚く狭く感じた。  敷きっぱなしの布団に、あちらこちらに落ちている洗ったんだか脱いだ後なのか分からない洋服達。乱雑に積み重なる本達は学校には関係無い物だろう。  男の一人暮らしだからとかそう言う問題じゃねぇ。男でも俺みたいに綺麗にしてる奴はいるし、掃除ぐらいするだろ。  俺はタイガーの部屋だからとかじゃなく、生理的に部屋に入る事が出来なかった。 「汚ねぇなぁ!こんな部屋に良く俺を入れようと思ったな!」 「そう?これ綺麗な方よ。昨日ゴミ捨てしたばっかだから」 「まだ捨てきれてねぇだろ!落ちてるのほとんどゴミだろうが!」 「そうでもねぇよ。ほら、これとかまだ使える♪あはは!これ友達とふざけて買ったんだけどさ~、マジあん時は面白かったな~!」  タイガーは落ちてた鼻メガネを付けて一人でゲラゲラ笑っていた。  どうでもいいからスルーする事にした。 「おいタイガー、尚輝くんと何を話したんだ?」 「え?ナオキング?あー、まぁいろいろとね~」 「ナオキング……随分仲良いみたいだな」 「初めはペンギンがきっかけだったんだ。伊吹と同じペンギン付けてる奴が前を歩いてたから俺から声掛けたんだ」  俺のキーケースに付いてるペンギンのキーホルダーか。確かに尚輝くんもいつも鞄に付けてるって言ってたもんな。  まさか二人が同じ大学だったなんてな。  俺は部屋には入らず立ったままタイガーの話を聞いていた。 「俺も伊吹とお揃い欲しかったから探してたんだけど、なかなか見つからなくてよ~。そんで、同じの持ってる奴ならどこで手に入れたのか教えてくれるかもーってさ。水族館って言ってたな」 「……それで?尚輝くんは俺の事なんて?」 「ナオキングとは良く恋バナしてたんだけどさ、お互いゲイで、片想い中って言う共通点があって。そんで月曜日にナオキングに会った時に何か暗い顔しててさ~。どうしたんだって聞いたら教えてくれたんだよ。伊吹の事を」 「何て言ってたんだ?」 「すげぇ言いにくそうだったけど、素直に教えてくれたよ。自分も高級デートクラブの会員で、伊吹と会ってるってな。いきなりだったから頭真っ白になったけど、すぐに理解したわ。あいつの話に出てくる好きな奴って確かに伊吹だったなぁって」  タイガーは怒ってる訳じゃないのか、特にうるさくなる訳でもなく、いつものように普通に話している。  きっと尚輝くんなりに悩んだんだと思うんだ。悩んだ結果、大切な友達であるタイガーに隠し続ける事が出来なかったんだろう。  真面目な性格の尚輝くんらしいな。 「で、お前はそれを聞いて何て言ったんだ?」 「正直、イラッとした。だけど、ナオキングは本当に良い奴だから、俺は友達を続ける事にしたよ」 「へー、お前にしては大人な判断だな」 「だろー?なんつーか、ナオキングと一緒に恋バナしてるのが楽しいからさぁ~♪俺の話を真面目に聞いてくれる事が嬉しくてよ~♪」  それじゃあ尚輝くんと仲が悪くなった訳じゃないんだな。それを聞いてホッとしていた。   「あ、話してたらナオキングからメッセージ来たー。今日は学校来ないの?だって~。最近じゃ一緒にランチしてるから今日とか寂しかったんじゃん?」  スマホをいじりながら報告してくるタイガー。  尚輝くんからそんなメッセージが来るとか羨ましいんだけど。  ゲッ、俺ってばタイガーに嫉妬してどうすんだよ。 「そんじゃ行ってやれよ。てかこんな時間まで寝てるとか遊び過ぎだろ」 「遊んでねぇよ。バイトだったんだって~」 「は?焼肉屋がそんな遅くまでやってるかよ」 「そっちじゃないない。コンビニの方~」 「あ!?お前バイト何個やってんだよ!」 「焼肉屋の後にコンビニの深夜始めた~。ちなみに今回入った給料は前やってたクラブの受付な」 「体大丈夫なの?そんなんで昼間寝てるとか学校どうするんだよ」 「伊吹の為だから余裕~♡いっぱい稼いで俺も伊吹を独占するんだ~♡」 「そうかよ、程々に頑張れよ。そんじゃそろそろ金返してくんね?もう帰るわ」  尚輝くんとの事も聞いたしもうこんなゴミ屋敷に用は無い。  早く帰って自分の部屋の掃除でもしよう。  俺が部屋の入口に立ったまま手を出して言うと、タイガーは鼻メガネをポイっと捨てて、敷きっぱなしの布団の下から長方形の封筒を取り出した。  うわ、そんなとこに金隠してるのかよっ!  友達とか来た時に盗まれても知らねぇぞ。

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