5 / 76

第5話

「懐かしいな」 彼はそう言って笑う。 その声に、胸の奥がひどくザワつく。 「お前、あんまり変わってないな」 軽い調子だった。 褒めているのか、ただの事実なのかも分からない 「…そう?」 声が少し遅れる。 変わったつもりでいた。 忘れたつもりでいた。 でも、こうして隣を歩くだけで 全部、嘘だったとわかる。 「静かだったよな、昔から」 その言葉に笑えなかった。 -静かだったんじゃない。 -言えなかっただけだ。

ともだちにシェアしよう!