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第62話
「…んで何考えてたんだ」
靴を脱いだところで
彼が聞いてきた
「次、どこ行こうかなとか」
「展示会もいいかなとか」
自分でもわかるくらい
声が上ずる
「それ、嘘だろ」
即答だった。
言葉につまる
「…俺がここに住むの」
「迷惑じゃないかなとか」
「俺が…俺が--」
「はいはい、わかったから」
頬に手を添えてきた
ひんやりしてて気持ちいい
「着替えような、顔熱いぞ」
目を閉じると、ふっと力が抜ける
-あ、これ
安心してる顔をしてるんだと思った。
彼が小さくため息をつく
「どうせ、手続きいるだろ」
「今度から、泊まり来い」
「引越しはそっからな」
頬に添えられた手に
無意識にすりと擦り寄せる
頷く
それを見て彼は少しだけ笑った。
「うちの看病は手厚いサービスたとなりますので
ご安心ください」
そう言ってあっさり抱き上げる
「ちょ!?」
「暴れんな」
寝室まであっという間だった。
手早く着替えさせられて
ベッドに寝かされる
布団をかけられて
額にまた手
「寝ろ」
その声を聞いたところで
もう何も考えられなくなった。
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