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第100話到達御礼 閑話 ケイレンとジュセル
*いつもお読みくださってありがとうございます。こちらは100話到達の御礼として書いたものです。ただジュセルとケイレンがいちゃいちゃしているだけですが、本編の方では多分描くことのないネタバレ的なものも入っています。読みたくない方は飛ばしても大丈夫です。
*時系列としては、初夜が襲撃によって失敗してしばらく経った後、くらいです。
「ごめん、俺届かなくてさ」
「いいよ、ジュセルの役に立てれば嬉しいし。そもそも俺の屋敷だしね」
一階にある団欒室、応接室、食事室にはそれぞれ、大きなガラスの嵌め込まれた窓がある。かなり大きなガラス窓で、天井の方にまで届きそうなものもある。
梯子を使ってもうまく掃除ができず、悩んでいたところにケイレンが手伝いを申し出てくれたのだ。
「アニスと鍛錬してる途中じゃなかったの?」
「いいんだ、ちょっと休憩」
「休憩になんねえじゃん、ここで働いてたらさ‥」
ぶつぶつと口ごもりながらジュセルがそう言うと、ケイレンはガラスを磨いていた手を止めてジュセルの方を見下ろしてきた。
陽の光が当たって、ケイレンの長い黒髪が少し透けて見える。さらさらとした美しい黒髪は、日に透けると青みがかって見えてそれはまたそれで美しかった。
「‥ケイレン、て、イケメンだよなあ‥」
「いけめん?」
耳慣れない言葉に、またケイレンが手を止めてジュセルの方を見た。日本語をまた使ってしまったことに気づいて、思わず口を塞ぐ。
掌の下から、言い訳がましく説明をした。
「えっと、小さい頃そういう‥言葉を使うのが流行って‥つまり、ケイレンはかっこいいなってこと!」
「え、」
今度こそケイレンは窓を磨いていたボロ布を取り落とし、梯子の上からスタッと下に飛び降りた。
そしてそのまま、ジュセルの両手を握り顔を寄せてきた。
「ジュセル、俺の顔好き?かっこいいって、思ってくれんの?」
「え、あ、うん、だってかっこいい、じゃん‥。今までだってそう言われたことくらいたくさんあるだろう?」
すぐ近くに端麗なケイレンの顔面がある。ここまで近いと破壊力がえげつない。恥ずかしくて目を合わせることができず、そっと視線を逸らす。
ケイレンはそんなジュセルの頬を嬉しそうにすりっと撫でた。ただ、頬を優しく撫でられているだけなのに、なぜか身体の芯が熱くなってくるような気がする。
「ジュセルに、かっこいいと思ってもらえるならこの顔に生まれてよかったよ」
「‥‥あんまり、自分の顔、好きじゃないのか?」
ケイレンの言葉に、僅かな曇りを感じ取ったジュセルは、躊躇いながらもその疑問を口にしてみた。ケイレンは目を細めて薄く笑うと、ジュセルの頭をぽんぽんと叩いた。
「そう、だなあ‥この顔のせいで色んな厄介ごとに巻き込まれることが多かったからな‥」
「そっか‥」
請負人協会 で初めての依頼を受けに行ったとき、受付台にいたコトルから聞いたことを思い出した。
ケイレンを巡って、骨折にまで至るような騒動があったと言っていたっけ。少し親しくするとそんな風に傷つけられてしまうのなら、いっそヒトとつきあうのを辞めようと思ったりしたのだろうか。
ジュセルはそんなことを考え、屋敷に来た請負人 に対して非常に態度が冷たかったケイレンのことも思い出した。確かヤーレも、ケイレンについて人付き合いがうまくない、いつも仏頂面のやつだったと言っていた。
前世も今世も平々凡々な顔立ちに生まれてしまった自分には、一生わからない(ある意味二生わからない)悩みだよな‥とジュセルは考えた。それでも、自分ではどうしようもない部分で、理不尽な目に遭い悩まなければならない、というのは随分辛いことだろう。
そう考えれば自然と手が動き、ケイレンの頬を撫でていた。
「俺、ケイレンの顔が綺麗でかっこいいなあと思ってるけど‥顔だけで、その‥好きになったわけじゃねえから、さ‥」
自分のこういった言葉が、これまでにケイレンの受けてきた色々な傷をどれだけ癒せるかはわからない。それでも、目の奥に寂し気なものを宿しているケイレンを、このままにはしておけなかった。
自分の頬に添えられたジュセルの手に、ケイレンは愛おしそうに自分の手を重ねて撫でた。その顔は穏やかで温かく、慈愛に満ち溢れたものになっていた。
「ありがとう、ジュセル」
黒輝石のような目でじっと見つめられ、そんな言葉を囁いたかと思うとすぐにケイレンは自分の身体全体を使ってぎゅっとジュセルの身体を抱きしめた。身体に伝わってくる強いちからと圧迫感が、本当なら息苦しいもののはずなのに、なぜか心地よい。ジュセルは少し息苦しくなりながらもおずおずとケイレンのがっしりとした背中に腕を回した。
「あの、さ‥」
閉じ込められた腕の中から、なんと髪を捩って顔をケイレンの腕の上に覗かせたジュセルが、息をついてから言いかける。少し紅潮したその顔がかわいらしくて、ケイレンは自分の顔が緩んでいくのを自覚した。
「うん、何?」
「何で‥俺のこと、好き、なの‥?だってさ、話してもないうちから好き、って言われても‥」
びく、とケイレンの身体が強張ったのが伝わってくる。違う、不安にさせたいわけじゃない。ジュセルは慌てて言葉を継いだ。
「いやあの、ケイレンの気持ちを疑ってるわけじゃなくて!その、単純に‥なんでかなって、俺考えてもわからないからさ‥」
ぎゅう、と抱きしめる腕の力をケイレンが強めたのがわかった。ジュセルの頭にケイレンが顔をうずめているようだ。そこで、もごもごとケイレンが話し出した。
「‥‥俺にも、わからないんだ‥」
「へ‥?」
集中してケイレンの声を聞きとろうとしていたジュセルは、思わず変な声が出た。いやしかし、前にも同じようなことを言っていなかったか。
「そういえば‥前にも言ってたよな、逃がしちゃいけない、とかって思ったとか‥」
「ああ‥ジュセルを一目見た途端にそう思った。俺の何を犠牲にしてもいいから、絶対にジュセルから目を離しちゃいけないんだって‥ジュセルが傍にいることが俺の幸せで‥そしてジュセルのことも幸せにしてやりたいって気持ちが、嵐のように心の中に一気に溢れかえって」
‥‥‥え‥?亡くなっ、た‥?どうして‥
突然死‥?え、原因は‥?
そう、ですか‥あ、わかりました、それは、はい‥
ケイレンの頭の中に、見知らぬ人物の声が一瞬こだました。そしてすぐに消え去った。だが、何かを喪失した怖ろしい虚無感だけが身体のうちに残っている。その虚無感が寒気を呼び起こし、思わずジュセルを抱いている腕の力を思いきり強くした。
「けふ、ちょ、ケイレン‥苦し、って」
「あ、ごめん」
腕をとんとんと叩いて訴えてくるジュセルに気づき、ケイレンは慌てて力を緩めた。自分に比べれば随分と華奢に見えるジュセルだというのに、そこに存在していることをいつもどうしても確かめたくなって、抱きしめる腕には力が入り過ぎてしまう。
緩めた腕の中でジュセルが小さな唇ではふはふと息をしているのが見える。かわいらしくて愛おしい。ジュセルは自分のことをj平凡な顔だといつも言うが、そんなことは全くない、とケイレンは考えている。
キリキシャの中でもあまり見られないような明るく美しい色合いの蒼い髪と瞳、日焼けなどしたこともないかのような、染み一つない肌。くりっとした目にやや丸っこい鼻、いつも潤んでいるような唇。
こんなにかわいらしい顔をしているのに、自分の顔を平凡だと言って卑下するジュセルが、ケイレンは心配でならない。ジュセルはきっとモテる、今までだってモテてきたに違いない。
なのに、全てが初めてと聞いた時には驚きもしたし歓喜もした。自分が何もかも初めてだということが、例えようもなく嬉しかった。ジュセルが傍にいるだけで幸せを感じていたが、その身体を愛することを知ってしまったら。
もう手放すことも、傍にいるだけで満足することもできない。
ケイレンはジュセルのつむじに軽く口づけてから、ジュセルの顎に手をかけた。
「え」
驚くジュセルに構わずくいっと顔をあげさせ、深く口づける。唇を挟むようにして何度も吸い、その表面をぬるりと舌で辿る。
「ふ、うぅっ、ん、」
突然の深い口づけに驚きながらも、必死な様子のケイレンにほだされてジュセルは目を瞑った。ケイレンの長く厚い舌が、ジュセルの咥内を余すところなく愛撫していく。ジュセルの弱いところをケイレンはしっかりと覚えていて、上顎や舌先を何度も舌で擦り上げてくる。
「う、ンンッ、ふ、」
身体の中を甘い痺れがじんっと突き抜けていき、力が入らなくなる。くたりとなったジュセルの身体を支えながら、それでもケイレンはジュセルの唇を貪った。
「ケイ、ん、」
きもちいい。きもちよすぎて、‥陰裂 から陰茎が出てきているのを感じた。陰 孔からもじわりと蜜が出てきているのがわかる。
まだそこに何も受け入れたこともないのに、なぜか胎の奥がきゅうっと疼くのを感じた。
ふと唇を離してケイレンはジュセルの顔を見た。すると、頬を赤らめうっとりと瞳を蕩かせているジュセルの顔が目に入った。
ギュン!と自分の陰茎が勃ち上がり、あっという間に痛いほど張り詰めたのがわかった。
かわいい。愛しい。自分のものにしたい。
繋がってひとつになりたい。
そんな欲が自分の内側から身体を灼くように湧き上がる。
ケイレンはジュセルの耳朶を優しく甘噛みした。
「ふ、ああ」
その刺激でもう全く力が入らなくなったジュセルの身体をがっしりと抱きしめ、首筋に唇を這わせる。舌先でくすぐるようにすると、ジュセルの身体がびくびくっと震えるのが伝わってきた。
ジュセルの下衣に手を伸ばし、その中に潜らせる。下着の中で、少し陰茎が勃ち上がり、その下にある陰 孔からはとろりと蜜が垂れてきていた。
「ジュセル、触るよ」
「え、あ、ああ!」
ケイレンの大きな手が優しく陰茎の先を撫でる。くちゅ、という音を立てて亀頭を撫でるとすぐに手を離し、その下にある蕾に移動させた。
「あ、」
陰 孔は、きゅっと縦に閉じられている。その襞を溶かすように指先でまさぐる。やわやわとした刺激が、甘い痺れとしたジュセルの下半身で疼き、それが快感となって身の内をじりじりと上ってくる。
きもちいい。
「あ、だめ、だって‥うあ」
「きもちい?」
耳元で、少しかすれたケイレンの低い声が響く。その声の響きさえ甘く、足に全く力が入らない。
ぷちゅ、という湿った音とともにケイレンの指が蕾の中にねじ込まれた。すぐに浅いところを擦るように動かされ、ジュセルは官能に身を震わせる。
きもちいい。きもちいい。
もっと。
もっと、ちがう、ものを、おくに‥‥
「ね〜ジュセル〜!おやつ食べた~い!何食べていい~~?』
廊下の方から聞こえるスルジャの声に、二人はハッとしてお互いの顔を見た。お互い共に、頬を赤くして欲を滲ませた顔をしている。こんな、誰もが使う部屋の中で、思わずことに及びそうになった自分が恥ずかしくなって、ジュセルはそっと身体をケイレンから離した。
下着の中に忍び込ませたけしからん右手もすいっと外され、ケイレンは悲しそうな顔をする。
ジュセルは俯きながら呟いた。
「あの、ごめん‥え、と‥」
そう言って一度言葉を切り、上目遣いにちらっとケイレンの顔を見てくる。
「‥ジュセルそういう顔は、今本当、俺、無理‥」
と言葉を漏らしたケイレンの上衣の端をジュセルはぎゅっと握って下に引っ張った。
そしてぐっと下に引き寄せられたケイレンの耳元に、ちゅっと小さな口づけをして囁いた。
「ごめん‥また、今度」
それだけ言うと、そそくさと部屋を出て厨房の方へ走っていってしまった。
取り残されたケイレンは、ガッチガチの下半身と、ジュセルの「また、今度」という魔性のささやきに煽られた欲情とを持て余して、両手をわきわきさせながら唸るしかなかった。
「~~~~~~~~!!」
*かわいそうなやつですが、ちゃんとそのうち、ちゃんとなりますので‥。
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