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第6話 愛を免罪符に搦め取り……
「僕たちも来年は就活をがんばらなきゃで。なのでアドバイスをお願いします」
同性とはいえ、すこぶるつきに美形の後輩から頼られたとあって野々宮はふたつ返事で応じる。
かたや奈月はマル秘情報と称するものに、いちいち熱心に相槌を打つ。
涙ぐましいほどのアピールぶりに神経がささくれ立つ。星輝は、せかせかと眼鏡のレンズを磨いた。
野々宮がいわゆるノンケなら、グイグイいっても空回るだけ。匂やかな花屋の店先に一瞬、視線を吸い寄せられても通りすぎるのと同様に。
ともあれ〝恋の芽は根こそぎにする〟というモットーに従い、牽制したほうが賢明だ。
星輝が定めたルール、人前で「あ~ん」は禁止。今回に限り破るのもあり、と唐揚げを挟んだ箸で奈月の唇をつついた。
慣れた咥え取りかたが印象に残るよう一拍おいたうえで、野々宮の様子を横目で窺う。
わざと多めに搾ったレモンの汁が朱唇を艶めかせるのを指でぬぐい、その指をねぶると、
「……イチャつく双子は倒錯感が半端ない」
餌に食いつく形になったとも知らず、野々宮は微妙にうわずった声で呟いた。
「双子は珍獣系らしくて、おれらが手をつなぐと『萌え』なんてキャアキャア騒がれて。エリートさまは低俗な輩 の同類じゃありっこないでしょうが」
「セイちゃん、ちょっと言い方」
ロンTの裾を引っぱる手を摑み寄せて、スプーンを持たせる。奈月の食べかけの親子丼からひと掬い、今度は星輝が『あ~ん』を堪能する側に回った。
好き放題に妄想を膨らませたあげく、自滅してくれれば好都合だ。
ワイシャツの衿ぐりで喉仏がごくりと上下した。星輝は内心、せせら笑った。好青年という仮面をかぶっていても、ひと皮むけばエロの塊だ。
「いや、俺の発言に問題がある。申し訳ない」
そう、爽やかな物腰で野々宮は立ち去った。
「せっかく仲よくなるチャンスだったのに」
ぷんすか唐揚げを全部、奪 られても星輝は満足だった。恋の病 が前駆症状の段階でボロを出すよう仕向けてやった。〝素敵な先輩〟像にひびが入り、野々宮のことなど瞬く間に忘却の彼方だ。
どのみち街角ですれ違ったのにも似た、ひとコマにすぎない。野々宮にしても噂の聖沢兄弟と行き合わせた一件は、雑務に忙殺されているうちに記憶の底に沈む。
名刺をちぎって割り箸と一緒に捨てて、それでカタがついたはずだった。
読みは外れた。たまたま知り合った日以来、奈月との会話に「野々宮さん」が頻繁に登場する。
聖域に等しいアパートの一室が汚染されていくようで、星輝は消毒薬をスプレーして回るほどだった。
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