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第8話 おとぎ話のような幸せに酔いしれる……
悶々と迎えた日曜日。集団食中毒が発生するとかして、イベントそのものが中止に追い込まれてほしい。願い虚しく、いそいそと出かけるのを作り笑顔で見送った。
束縛するあまりウザがられて、そのぶん野々宮にのめり込む、なんて方向へベクトルが働く事態は避けたい。その一心で。
手綱をゆるめすぎた。
「……いつまで、ほっつき歩いてるんだ」
星輝はかれこれ一時間ものあいだ窓辺に陣取って、アパートの前の通りを睨みつづけていた。夜の帳 が下りたといっても、まだ宵の口だ。肉フェスを満喫したあとは、おおかた腹ごなしがてら、イルミネーションが煌めく街をぶらついているのだろう。
大丈夫だ、遅くとも終電までには必ず帰宅する……セックスの余韻を引きずって?
月が輝きを増していくにつれて、掛け時計を見る回数が増える。
スマートフォンを引っ摑んだ。奈月の居場所を常に把握できるよう、また万が一GPS機能をオフっているときの対応策として、おそろいのスマートフォンに追跡アプリを密かにインストールしておいた。矢印は目下、
「なんだ、駅前界隈を通過中だ」
へたり込むのと同時に、ずきりと掌が傷む。爪が食い込んだ痕も鮮やかに、血がにじんでいた。
その血を混ぜた蠟 で呪殺用の人形をこしらえて、野々宮と唱えながら熱湯に放り込む──それとも針を突き刺そうか。
やがて仲睦まじげに笑い交わしながら近づいてくる、ふたつの人影。
街灯の光の輪が、その姿を照らし出した瞬間、星輝は思わず壁を殴った。野々宮に見立てて、もういちど。
純粋な好意から、わざわざ奈月を送り届けにきたとは到底思えない。獲物の信頼を得たうえで送り狼に変身するのが、腐れ外道の手口なのだから。
スニーカーをつっかけ、だが蹴り脱いだ。奈月をつれ戻しにいくのは墓穴を掘るも同然。
障害が多いほど恋の炎は燃えあがるもので、ロミオとジュリエットの気分を味わわせるのはマズい。
「害虫に、ふさわしい制裁を加えてやる」
歯を食いしばった間から絞りだした。そう、情状酌量の余地はない。
野々宮の、国宝級と評されるイケメン俳優を意識したヘアスタイルだとか、けっこう鍛えているっぽい体つきだとか。自信家のタイプに限って心が折れるときは砕け散るところまでいく。
ふつうのやり方では生ぬるい、生き地獄に堕ちて、のたうち回るほどのダメージを与えてやろう。
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