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第9話 もしも難破船の乗組員が命からがら島に泳ぎ着いたときは……
あれこれと計画を練るうちに真夜中をすぎ、奈月が、いつものように星輝とひとつ布団にくるまりにきた。シングルベッドだが温もりを分かち合って眠るぶんには、うってつけだ。
だが今夜は、くっつかれると疎ましさが先に立つ。その理由は、野々宮が立ち去りぎわに奈月を抱き寄せるそぶりを見せたせいだ。あの光景が頭にこびりついて離れない。
星輝はベッドの幅が許すかぎり横にずれた。
「布団に隙間ができて、寒い」
おんぶオバケのようにしがみつくのを、
「ウザい、たまには自分のベッドで寝ろ」
突きのけたい、抱きしめたい、せめぎ合う気持ちを持て余す。
うなじを寝息にすぅすぅとくすぐられるにつれて目が冴えていく。首をねじ曲げた。あどけなさの残る寝顔に癒やされるどころか、心の中が黒々と塗りつぶされるようだ。
野々宮は癌細胞のごとく性質 が悪い。これ以上、はびこる前に根絶やしにして、愛する弟を魔手から護り抜く。
それが兄の使命だ。
音を忍ばせてトイレに入った。スウェットパンツをずり下ろすのももどかしく萌しはじめているものを、しごく。
「……!」
瞬く間に爆ぜたのは、八つ裂きにしても飽き足りないほど野々宮憎しに凝り固まっているのが作用したからに違いない。
それとも……甘やかな体温に酔っぱらった?
街が氷雨にけぶる夜、星輝はオフィス街へと赴いた。野々宮の勤め先は、この一角に自社ビルを構えている。野々宮が現れしだいあとを尾 けるのが、計画を推し進めるうえでの第一歩だ。
出たとこ勝負では、しくじる。破滅へ至るレールを敷くにあたっては行動パターンを調べること──だ。
学食で双子のツーショットを拝ませてやったのは失敗だったと、あらためて悔やむ。奈月に扮して標的を誑 かし撃退するまでがワンセット、という得意技は使えない。
まぐれ当たりでも野々宮が、奈月のふりをした星輝だと見破った時点でパアだ。
と、奈月が泣き虫ウサギのスタンプを送ってよこした。留守番は退屈、と匂わせて。
あざといやつ。そう毒づくのは単なるポーズで笑みがこぼれる。あっかんべをする犬のスタンプで、ちょっと意地悪して返した。
かじかんだ指で傘の持ち手を握りなおす。幸い、ノー残業デーとのことだ。程なく社屋からぞろぞろ出てきた男女の中に、標的の姿を捉えた。
咲き乱れる傘の花にまぎれて、マフラーに顔をなかば埋めて尾行を開始する。
空き缶をポイ捨てするといった、みみっちいものでも使い道はある。奈月が野々宮に幻滅するようなネタにありつけたら、ラッキーだ。
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