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『初日』ー4
「本日は新しいお客様が到着されましたので、ぜひ他の皆様とお食事を」
そんな執事の言葉の後、各部屋に案内された。
二時間ほどしてメイド服の女性が各部屋を回り、二階の大広間へと案内された。
レトロ感と気品のある美しい大広間 だ。もう既に十数人ほどの客人が集まってきた。立食パーティー風で、数か所のテーブルに料理や飲み物が並んでいる。メイドや給仕係も待機して世話をしている。
壁を背にソファーも幾つかあり、皆思い思いに過ごしているようだ。
「え……っと?」
周りを見渡し、詩雨は目を丸くした。
「これは……仮装パーティーか何かなのか……夏生」
「さて……」
女性は皆時代がかったドレスか着物。男性は燕尾服に……軍服の者もいた。
「軍服……って」
――『あの絵』を思い浮かべる。
「自衛官かもしれないよ。警察官なんか結婚式とかでも制服着るみたいだし」
「なんかオレら場違いじゃね? 夏生はスーツだからいいけど」
スーツを着ている夏生以外はTシャツにジーンズだ。唯一女性のリナも、肩を出したトップスにミニ丈のスカートという今時ファッションだ。
「ま、いっか」
腹を空かせた彼らは怯むことなくその中に入って行った。中に入れば、逆にその服装や髪色を珍しがられたが、皆歓迎してくれた。
女性でもないのに、正装男子に囲まれたのが詩雨だ。
それも当然かも知れない。白い肌、美しい顔立ち。艷やかなライトブラウンの髪は光を浴びて金色に輝いている。項 を隠す髪は青いリボンで結ばれていて可愛い。瞳は宝石のように輝くブルーグレイ。ここにいるどの女性より美しい……そう思っているのは遥人だけではないはず。
我先にと話し掛けようとする男性陣。それを遥人が、詩雨の後ろに立って頭越しに威嚇しまくっている。
流石モデルと唸らせる、背も高くスタイルも良いイケメンの遥人。詩雨たち同様ここでは目を引くアッシュグレイの髪は男らしい短髪。彼の傍にも女性が近寄ろうとするが、余りの無愛想な顔とびんびんに感じる殺気で、皆恐れをなして遠巻きにしている。
やがて蓄音機が音源のような風情のある音楽が流れ始め、男女ペアになって優雅に踊り始める。所謂社交ダンスというものだ。
「詩雨ちゃん、踊ろうよ」
カイトが周りにいた女性ではなく、詩雨の手を取った。
「え? 海 、女子と踊れよ」
何言ってるんだ? というような顔をして、こういうものは男女で踊るものだろと、つけ加えた。
「でも、昔のニッポンではダンスホールなんかで男同士で踊ったりしてたらしいよ」
「なんでそんなこと知ってるんだ」
ぶつくさ言ったが、強引に中央に連れて行かれる。
「カイト、詩雨さんの相手は俺がする」
遥人が颯爽と登場したものの、
「ハルくん、社交ダンスしたことあるの?」
そう反撃され、ぐっと黙る。
いつもならそれでも強引に突き進もうとするが、こればかりは詩雨に恥をかかせるわけにはいかないと、不本意ながら身を引いた。
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