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『初日』ー7

「なかなか趣きのある風呂だな」  広くゆったりとした浴槽。浴室には珍しい大きく切り取られた窓。敷地が広く木々で囲まれていて、外界から切り離されているからだろう。今は真っ暗で何も見えないが、明るいうちに入ればさぞかし景色も良いに違いない。 「で。何でそっちの端にいるんです?」  なんとなくノリで一緒に来てしまったが、元来詩雨は余り遥人と入ろうとしない。  二人は恋人同士で、同居もしている。当然一緒に入ることもある。しかし、詩雨にとってそれは未だに恥ずかしくて苦手なことなのだ。  しかも、ここは他人の家の浴室。 (恥ずかしくないわけないだろ)  詩雨は全面に「恥ずかしい」と書いてある顔を遥人には見せず、背を向け浴槽の(ふち)に顎を乗せていた。  ちゃぽん……と、返事の代わりに片手で湯を打ったのが物哀しく響く。 「…………」  まったく、詩雨さんは。遥人はそう思いながら小さく溜息を()くと、そっと近づいて露わになっている(うなじ)に唇を落とす。 「ん……」  遥人のせいで項が酷く敏感になってしまった詩雨は、それだけでびくんっと身体を震わせた。突然のことに声も抑えることが出来なかった。 「な、に、ハル」  普段は遥人呼びなのに動揺すると「ハル」に変わる。抗議しようとする間に次々と口づけで攻め立てられる。  詩雨の白い背中に、ほどよく筋肉のついた広い胸をぴたりとくっつけ、しかも両膝で腰の辺りをしっかりホールドしていた。 「あ、ハル、おまえっ」 「ふふん」  楽しそうに鼻を鳴らす。 「ふふん、じゃねぇよ。おまえ、こんなとこで」  詩雨がそう言うのも無理はない。いったいいつの間にと思うくらい、遥人の中心は熱く猛っていた。それをちょうど詩雨の尻の辺りに当てている。後ろ向きに座っていたことが、逆に(あだ)となってしまった。  ゆっくりと擦るように動かし始める。 「あ……」  つい甘い吐息が漏れてしまう。  遥人の手は詩雨の前に回っていて、赤く色づいた突起を探り当てる。後ろからの愛撫は、詩雨が一番感じ易い形だ。次第に彼の中心にも熱が溜まってくる。 「あぁ……ハルぅ……」   名を呼ぶ声も艶っぽさが滲む。  しかし。 「おいっ、人様の家のお湯を汚す気かーっっ」  理性をフル回転させて制した。 「しょうがないなぁ」  呆れたように溜息を()く。 「しょうがないじゃないっ」  それでやめてくれると思いきや、前向きのまま抱っこされて湯から引き上げられた。  ひんやりとしたタイルの上にうつ伏せに置かれた。 「これならいいでしょ」  ぐいっと腰を持ち上げられたかと思うと、尻に昂りを当てられた。 「ハ、ハルぅ〜。誰か来たらどうすんだよぉ」  してほしい気持ちと、ダメだという気持ちが綯い交ぜになり、情けない声が出る。 「来ませんよ〜。それに誰か使ってたら遠慮するでしょ。大浴場じゃあるまいし」  遥人はかなり余裕を咬ましているが、さすがに最後までせずに、素股でお互いの欲望を放った。 「まったく、油断も隙もない」  ベッドの上に座り込み、暑さで上気した頬をパタパタと手で扇ぐ。 「でも、なんとなく背徳的で興奮するでしょ?」 「バカっ」  遥人の裸の胸にボスっと拳を当てた。 「ほんと、可愛いなぁ。詩雨さんは」  自分の胸に当てられた拳を掴んで、自分の口に寄せた。 「ばっかじゃねーの」  照れて真っ赤になる。自分の美しさも可愛さもまったくわかっていない詩雨を更に可愛いと思う遥人だった。 「あ……そういえば」  ふと思い出したように。 「なんです?」 「実は……あの時……誰かの視線を感じたんだよな……それも窓のほうから」 「え? 気のせいじゃないですか? 二階の風呂ですよ」 「だ、よな」 「ふふん、もしかしたら、幽霊?」  悪い顔をしている。 「え」  冗談だとわかっているのに一瞬ぞわっとして、「ばーかっ」と言って誤魔化した。

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