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『2日目』ー2
「リナは昨夜から体調を悪くして……柿沼さん何かお薬ありませんか?」
「そうでしたか。畏まりました。では、お部屋のほうにお薬と軽いお食事をお持ち致しましょう。皆様はどうぞ食堂のほうへ」
扉を開け、皆を送り出す。
最後に柿沼の前に来た詩雨の顔は仕事用のそれになっていた。
「柿沼さん、監督の鎌田から打診がいっていると思うのですが、こちらの五島邸が映画のロケ地の候補に挙がっていることを」
「…………」
一瞬間があり怪訝そうな表情をしているように見えた。
(おいっカマオ、ちゃんと伝えたんだろうなっ)
詩雨は内心不安になった。
柿沼はにこりと微笑み、
「はい、承っております」
と答えた。
(脅かすなよ〜)
ほっと胸を撫で下ろす。
「建物内やお庭なんかも撮影させていただければありがたいんですが。その写真を何かに使うことはありません。きちんと映画撮影が決まった後に撮影されたものだけを使わせていただきます」
柿沼を安心させるように丁寧に説明をする。
「承知いたしました。では……」
少し考える素振りを見せたあと、
「こちらの棟 の一階の右角部屋だけは、ご遠慮ください。お嬢様の私室になりますので。あとは大丈夫でございます」
この館はコの字型になっている。この大広間や詩雨たちに充てがわれた部屋があるこの棟と、中庭を挟んで向かい側に玄関のある棟がある。その二棟は渡り廊下で繋がっており、一階からも二階からも行き来出来る。
「ありがとうございます。お約束は守ります」
詩雨の顔に安堵の色が滲んだ。
* *
詩雨と遥人、それからカイトはブランチを終えると、まず建物内を回って撮影をした。
「なんで、あんたも一緒なんだ」
「なんでー? 一緒じゃだめ?」
超がつくほど不機嫌そうな遥人。それに対してカイトはかなりご機嫌だ。どう邪魔してやろうかと算段中という感じだ。
「僕映画の主役だよー、一緒に回る権利あると思うけど。ねぇ、詩雨ちゃん」
それはごもっともなご意見だが……と詩雨は思いながら遥人を見ると、彼は全く納得していない顔をしていた。
(はぁ……なんて、顔してるんだ。大人になれよ、ハル)
カイトが年下の甘えん坊感を出しながら詩雨の腕に自分の腕を巻きつければ、遥人はぴとっと背中に寄り添い首に手を回したりする。詩雨を挟み、静かで激しい攻防が繰り広げられていた。
もちろん二人ともプロなので、仕事ということもわかっており詩雨がカメラを構えた時には絶対に邪魔はしない。詩雨は建物や景色だけではなく、時折映画のストーリーを想像しながら二人を立たせてシャッターを切っていた。
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