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『4日目』ー1

* * 四日目 * * 「カマオ現れないよなぁ。連絡もないし。っていうか、ここスマホ使えないし。あとで駐車場のほうへ行ってみるか」  そういえばすっかり忘れてたなぁと思いながら。  カメラを持って館内を散策中の詩雨と遥人。そして、少し気分の浮上した――というか慣れてきたリナが今日は一緒だった。カイトは部屋に籠っている。よほど昨日のことが堪えているらしい。  そういう詩雨と遥人も昨日のことはあまり触れたくはない。昨夜も詩雨が夢にうなされていたということも。 * *  四日目ともなるともうだらだらと寝ているのに飽きた面々は、早めに起き、きちんと朝食の時間に食堂に向かった。  その時にはもう食事は用意されていた。ビュッフェ形式で種類も様々。どうせ他の客人は食べないのだから、自分たちの為にこんなに用意しなくても、と思う。 「詩雨さん、それ、ハルくんからですか?」  同じテーブルを囲み食事をしている時にリナが目敏く見つけたのは、左手の小指に嵌められたシンプルな指輪だ。 「あ、違うよ。これは――」  その指輪は二日目に、沼の水際で拾った指輪で、恐らくは桜色のワンピースを着た女のもの。あとで返そうと思ったが、それ以来出会うことがなく返す機会を失っていた。  今朝部屋のテーブルに置いたままだったそれを目にして、何の気なしに嵌めてみたら取れなくなってしまった。  何の気なしに、というのもおかしな話だ。他人の指輪なのに。詩雨自身もそんな行動に出た自分を不思議に思っていた。 「でも、それ、結婚指輪ですよね?」 「あ、やっぱりそう思う?」 「はい。それも女性もの――すごく指の細い(かた)みたいですね」  指輪の意匠とサイズを見れば想像はつく。男にしては指の細い詩雨でさえ、薬指に入らなかった。 「あ、だからか! ハルくんがなんかぶすったれてると思ったら」 「べつにっ」  明らかに怒った口調で答えた。 (くそっ俺が詩雨さんにあげる前に!)  しかし、気がかりはそれだけではない。詩雨だけが見たという女。詩雨の見る夢。カイトが見た幽霊。 (幽霊なんて信じてるわけじゃないけど――) * *  三人で森の中を歩いていると、ふっと(ひら)けた場所に出る。 「わ、綺麗……」  リナは感歎の声を上げた。沼の水面に太陽が反射して、きらきらと輝いている。 「こんなとこがあるなんて。ね、詩雨さ……」  詩雨のほうを振り返ると、彼の手が遥人の腕に絡んでいた。身体全体で遥人に凭れ掛かっている。 「旦那様……綺麗ですね」  リナには聞こえない小声で『詩雨』は言った。  遥人がぎょっとする。  二人の間で行われていることを知るはずもないリナ。それ故にむっとして。 「何、ハルくん。こんなところで、これ見よがしに」   

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