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『4日目』ー2

 つかつかと歩み寄って繋がっている腕をべりっと引き剥がす。二人の仲を認めているリナだが、今でも詩雨のことは想っている。二人に何かあれば割り込んでやろうと密かに思っていることは、遥人も知っていた。 「え、俺じゃ」 「じゃあ、詩雨さんだっていうの? 詩雨さんは人前でそんなことしないでしょ」  決めつけて言い放つ。  しかし、確かにリナの言う通りで、二人が恋人同士であることを知っている人間の前でも普段彼のほうから密着してくることはない。  だから、遥人もおかしいと思うのだ。 「詩雨さ……」  詩雨に顔を向けて話し掛けようとしたリナが固まった。詩雨がリナを睨んでいたからだ。  そんな顔は今まで一度も見たことがなかった。リナがたじろいで後退った。  緊迫した空気が漂う。  ――ふっと。  何かが通り過ぎるように風が吹く。 「あーなんか、お腹空いちゃったなぁ。今何時頃だろう」  まるで何もなかったみたいに、いつも通りの詩雨だ。 「詩雨さん?」 「どうした? リナ」  奇異なものを見る目でリナが自分を見ているような気がして、怪訝に思う。 「いえ、何も。そうですね。私もお腹空いちゃいました〜。戻りましょうか」  リナ自身も今までのことはなかったことにした。 * *  食堂の時計は午後一時を回っていた。  三人が中に入ると、夏生とカイトがテーブルに座っていた。  食堂には朝食とはまた別の料理が用意されている。  朝起きれば大広間には飲み物、食堂に行けば三食きちんと食事の支度が整えられている。日中は詩雨たちしかいないというのに、至れり尽くせりで申し訳ないくらいだ。  夏生とカイトはもう既に自分でチョイスしたものをテーブルに並べ、つついていた。あとから来た三人もそれぞれ料理を選び同じテーブルに固まった。 『お腹が空いた』と言っていたはずの詩雨とリナだが揃って飲み物しか持ってこなかった。実際には食欲が湧かないのかもしれない。 「皆様。あまり食が進んでいないご様子ですが。何かお好きなものをシェフに作らせましょうか」  柿沼がまたも忽然と現れた。 「いえ、柿沼さん。もうこれで充分ですよ。朝もしっかり食べさせて頂きましたし、今はこれで」  夏生が当たり障りなく答える。 「そうですか? それならよろしいんですが……」  と言いつつ心配げな顔をしている。 「あ、あの」  カイトが突然、ガタンと音を立てて立ち上がった。 「この家ってっ」  どうやら堪りかねて爆弾を投下することにしたらしい。  しかし、柿沼の意識は別なところに持っていかれていた。 「あ、それは……」  彼の視線の先には詩雨の左手があった。 「それは、その指輪は」

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