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『4日目』ー4
終戦後、圭吾からは何の音沙汰もない。
桜乃は、圭吾が縁談を受け入れ、自分を捨てたのだと思い込んだ。次第に心が病んでいき――そして、あの沼へ。
* *
「じゃあ……オレが出会った、あの沼で絵を描いていた、桜色のワンピースを着た女の人は……」
「きっと……桜乃様ですね。よくあの沼の畔にお二人で行っては、絵を描いていらっしゃいました……」
柿沼は想いを馳せ、じんとした表情をしている。
「いや、そういうことじゃなくて……その女の人は幽霊……ってことだろ」
柿沼以外の全員が蒼褪める。皆一様に背筋を凍らせた。
「もうっいやっっ早く帰りたい!」
とうとうリナが泣き出した。耳を塞いでテーブルに突っ伏する。
「僕も帰りたい……」
カイトは井戸でのことを思い出した。
「そ……だな……夏生……予定より早いけど」
詩雨もそういうのが精一杯だった。
「にわかに信じ難い話だけど」
一番冷静な夏生が決断を下す。
「鎌田氏もなかなか現れないし、ここは一旦――柿沼さん、僕たち今から支度して帰ります。いろいろお世話になったのに申し訳ないんですが」
「あの、この指輪、どうにか外してあとで送りますんで」
本当は今すぐ外したいのに、関節で引っかかっていてどうにも外すことができない。
「ご無理なさらず、皆様明日にされては」
柿沼の視線は食堂の窓に向けられていた。その視線を追い、
「ひえぇぇぇ」
カイトが大袈裟に叫んだが、皆の目に映った光景は大袈裟でもなんでもなかった。
先程まで晴れ渡っていた空はどこに行ってしまったのか。
ガシャガシャと雨粒が窓ガラスを打ちつける大嵐だった。
「すぐ止みそうもありませんし、これから暗くなって行くでしょう。ご出発は明日 の朝にされたほうが」
「…………」
誰も一言も発せず、蜘蛛の子を散らすようにして、食堂を飛び出して行った。
* *
窓の外は真っ暗だった。
雨足は変わらず、あのまま出発して山道を行かなかったことが、果たして正解だったのか。
一人でいるのが怖いリナとカイトは夏生の部屋へと収まり、詩雨と遥人は当然二人で詩雨の部屋へと戻った。
二人とも言葉少なだった。時折詩雨は左手の小指に嵌まった指輪を弄っていたが、外れる気配がない。
夕食時になってもこの五人は部屋を出ることはなかった。他の客人たちはまた大広間で賑やかに過ごしているのだろうか。
「他の客人……あれ? 待てよ」
詩雨が出会った女、それからカイトが引き上げた女も、亡くなったここの『お嬢様』であったということに気を取られていたが。
「ここのお嬢さんの元旦那……戦争に行ったって言ってなかったか。戦争っていったいいつの――ねぇ、詩雨さん」
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