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デッド・オア・アライブ

 彼らは深刻な顔つきをして小声で話し始める。  何かまずいことを口走ったのかとソワソワしていたら、「とりあえず、きみの名前や住所を、この紙に書いてもらえないかな?」と犬のおまわりさんが()()に飛び乗り、ろくろ首さんが持ってきたバインダーを、机の上からくわえて持ってきた。  警察を名乗る彼らに疑いの眼差しを向けたら、「あなたのいた世界と同じかわかりませんが警察手帳です」と三人は胸ポケットから黒い手帳を取り出した。 「僕のいた世界の駐在署や警察署はもっと無味乾燥な建物で、容疑者や加害者、被害者もこんな豪華な場所へは通しませんよ」と告げる。  人からぞんざいに扱われ、肉親からも裏切られたのに「はい、そうですか」と信じられるわけがない。  しかめっ面をしていたら、犬のおまわりさんが真剣な顔つきをした。 「それは、きみが(まれ)(びと)のオメガだからだ」 「稀人?」 「そうです。わたしたちの()む世界ではオメガは大切な存在なんですよ。妖と人間がともに生きる世界にも差別は依然あり、海外の妖との相互理解も難しい。そんな不安情勢を打開する希望の光がオメガです」 「そんな話……」 「信じられないわよね。でも人間のオメガは唯一、人間と妖の混血児である半妖を生める貴重な存在だわ。半妖は人間でも、妖でもないけど人間と妖の心を持つ子どもよ。だから、きみみたいに異世界から来たオメガは大切なお客様として、おもてなしするの」  インチキ臭い話だなと(へき)(えき)していたら、犬のおまわりさんが「ただし」と(すご)んだ。「五十歳までに番が見つからず、元の世界にも帰れなかった稀人は処刑される」   ……なんだ、やっぱりこの世界も根本的には同じなんだ、と()(ちょう)気味に笑う。 「つまり僕は子もなせず保護された犬猫のように、引き取り手が見つからず、子もなせなければ殺処分になる運命なんですね」 「処刑といっても、この世界に害を与える人間だったらって話よ。言ったでしょ、大概は元の世界に戻るって」  元の地球へ戻っても身体を切り刻むか、何百人の男たちと日夜セックスして、億単位の金を稼がなくてはいけないんだ。  僕の帰りを待つ家族や友だちはいない。  帰る場所なんて、どこにもないんだ。 「それにですね、きみの場合は……」

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