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思い出したいのに思い出せないこと2※
薄っぺらい衣装を脱ごうとしたら、なぜか天さんがネクタイを外し、靴下を脱いだ。ワイシャツの袖 を肘 まで折り始める。
「何をしているんですか?」
「決まってるだろ。消毒するんだ」
「消毒?」
訊 き返すと彼はパンツの裾 も上げた。
「おまえの身体からオレ以外のアルファの臭いがプンプンするから隅々まで洗う」
「子どもじゃないんですから自分で洗えますよ。それに発情期を起こして……あっ」
軽々と抱きかかえられてしまった。
片手でガラス戸を開け、僕を下ろすとシャワーヘッドを手にして、お湯の温度を確認する。
拘束されていないから、いつだって逃げられる。
さっきの話しぶりからして部屋の近くで警察の人たちが待機している。大声で呼べば、すぐに来てくれるだろう。
恐怖で足が竦 んでるんじゃない。彼の側を離れたくなくて――キスの先を天さんと今すぐシたいと望んでいるから――ここに留まっているんだ。
温度調節が終わり、シャワーヘッドを立てかけた天さんは獲物を狙 う肉食獣のような、鋭い目つきをした。
「てめえが何も覚えてねえのに、無理やり、うなじを噛む野暮な真似はしねえ。けどな、」
天さんの綺麗な手が、胸元の真ん中にあるリボンの先を摘んだ。殊更ゆっくりリボンを解かれ、両肩の肩紐を二の腕のところまでずらされる。
「この身体はおまえのもんであり、オレのもんでもあるって、わかってもらわねえとな」
シャワーのお湯が流れる床にベビードールが落ちて上半身を隠すものがなくなると、唇をついばまれた。
砂糖菓子のように甘い口づけを受けながら彼の首へ手を回す。角度を変えて唇をはまれているうちに、何も考えられなくなり、頭の中が真っ白になる。
息が持たず口を開けば、肉厚なものが舌先に触れた。
驚いて舌を奥へ縮こまらせたら、天さんの舌に絡めとられ、丁寧に舐 められる。
全身がゾクゾクして、紐パンの中が窮屈になり、後孔が濡 れていく。
くぐもった声が自然と漏れて足から力が抜ける。膝 が笑い、立っていられなくなると、天さんに抱きとめられた。
唇が解放され、酸素を求めて胸を上下させている間に、温かくなった床へ座らされる。
「なあ、これも店のやつにやられたのか? それともヤクザか?」
噛み跡の残る、赤く腫 れぼったい乳首を指先で軽く弾かれた。
「お店の人です。歯を立てられた後に洗濯バサミをつけられました」
話しているうちに、研修の内容がありありとよみがえり、震えが止まらなくなる。
ガシガシとプラチナ色の頭を乱暴に掻 いた天さんが「意地の悪いことを言って、すまねえ」とバツの悪そうな顔をする。「もっと前に会えてたら嫌な思いをさせなかったし、ひでえことをされずに済んだのに不甲斐ねえ。マジでガキだな」
「いえ、大丈夫です。もし天さんの服に口紅やファンデーションがついていたり、ほかのオメガのフェロモンやキスマークがついていたら、同じような態度をとってしまったと思うので……でも、よかった」
「何がだよ?」
「天さんが初めての人で。あなた以外のアルファに処女を奪われて何人もの男に抱かれたり、うなじを噛まれずに済みました。僕、すごく運がいいです」
すると彼は頬を僅 かに赤らめて唇を尖 らせ、シャワーヘッドを手にした。
「バカ言ってんじゃねえよ」
ぶっきらぼうな口調で悪態をつき、温かいお湯を肩にかけてくる。
そうして天さんは拾ってきた子猫や子犬を相手するみたいに、僕の全身を手速く洗ったのだ。
このまま何ごともなく終わってしまうのだろうか?
燻 る身体を持て余していると、突然彼が身をかがめて、ふわふわしたやわらかな頭が胸元に来る。
「天さん? ……ひあっ!」
さっきしたキスみたいに乳首を舐められ、裏返った声が出る。
「な、なんで……? 僕、母乳出ないし、女の人みたいにおっぱいが大きいわけでも……」
「んなもん、わかってらあ」
そう言って左の乳首を軽く何度も吸われて、右の乳首はいたわるように指の腹で転がされる。
目の前にある手触りのいい髪を撫 で、彼のピクピク動く耳に指を這 わせた。
水しぶきの音に混じって天さんが僕の乳首を舐め、吸う音がする。熱が下腹部に溜 まって、重くなる。
「次、こっちな」
低く掠 れた声がすると今度は右の乳首を口に含まれた。
背を反らしながら密かに息を吐き、内 股 を擦り合わせた。
「んだよ、顔出して震えてんじゃねえか。下着の意味ねえな」
楽し気な様子で喉をくつくつ鳴らす。
図星を突かれ、羞恥 を感じると同時に、切っ先から透明な先走り液が、こぼれ落ちる。
「だって……天さんが気持ちいいことをするから……我慢できないんです」
オメガの男性器は小ぶりで、子どものときと大して変わらないケースが多く、僕も例外じゃない。だからといって女性用の面積が少ない下着を履かされれば、はみ出しそうになる。
ましてや発情状態で、魂の番に触れられたら、すぐに天を向いてしまっても、おかしくない。
「そうかよ」と左側の紐を解かれる。
彼の顔がさらに下がり、思考力の落ちた頭でなんだろう? と目線を落とす。
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