6 / 8

第6話

「起きろ」 布団を剥がされたまま丸くなって動かない。 「…聞こえてる」 声だけ出してる、体は1ミリも起こさない。 冷えた空気が背中に触れて、余計に布団の中へ潜り込む。 「起きてるなら出てこい」 「やだ」 即答だった。 子供みたいだと自分でも思うけど、訂正する気はない。 布団の端を掴まれて、引っ張られる。 「寒いって言っただろ」 「もう昼近い」 「関係ない」 グッと力がかかって布団がズレる。 それでも腕を絡めて話さない。 布団の中はまだ、あいつの体温が残っている。 匂いも、空気も、昨日のままなのに。 「…まだ布団にいたい」 ぽつりと落ちた声は自分のものだった。 引っ張る力が、一瞬だけ止まる。 沈黙。 布団の上から、視線だけが降ってくるのがわかる。 「出なくていいとは行ってない。」 そう言ってから少し間を置いて。 「でも、無理に起こす気もない」 布団がそっと戻された。 その優しさがいちばんずるい。 「…じゃあ、もうちょいだけ」 布団の中からそういうと 返事の代わりに、ため息がひとつ落ちた。 「5分だぞ」 その声が近くて 起き上がらないまま、目を閉じた。

ともだちにシェアしよう!