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「見てくれだけよくってもな」
と、そこで背後から声がして振り返ると、幼馴染のノーラン・ブロアが腕を組んで立っていた。
ジェレミーは前へと向き直りつつ訊ねる。
「もう会ったのか?」
「ああ、今朝お目通り叶ってな」
ノーランはこのメールの地で代々領主を務めるブロア家の跡取り息子である。
王都から視察に訪れた王子殿下御一行をもてなすのはもちろん彼の家の役目であり栄誉でもあるはずなのだが、それにしては表情も口調もあまり晴れやかとは言いがたい。
「で、どうだった?」
「ま、ウワサどおりってとこだ。箱入りも箱入り、深窓のおぼっちゃんだな、あれは。座ってるだけであとはまわりが全部やってくれるんだからそうもなろうけどよ、あんなんで次期国王が務まるもんかねぇ」
そう言って肩をすくめてみせたノーランの言葉に、そばで聞き耳を立てていた街の者たちがもっともらしく頷き合った。「やっぱりなぁ」「これだから男の子の末っ子はねぇ」とみんな言いたい放題である。
カシウス王子に関するウワサは、このイテュール王国に住む者ならば一度は耳にしたことがあるだろう。
曰く、『世間知らずの箱入り王子』。
現国王の七番目の子として生まれたカシウスは、ようやく授かった世継ぎの男子として大事にされすぎたあまり世間知らずで気位ばかり高くて頼りない――そんな評判が国じゅうでささやかれていた。
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