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 虚勢を張っているつもりはなかった。ノーランのまえで強がったってすぐに見抜かれてしまう。  だから彼に言ったことは本心でもあるのだが、この先の将来のための準備はいまだ整ってはいないというのが実情だった。  憂慮とはいかないまでも、そこは少し焦る気持ちがあるにはあった。ジェレミーは今年で二十二歳、世間では独り立ちしてもおかしくはない年齢である。  そういったことを考えつつ、ジェレミーは先ほど目にしたカシウス王子の姿を思い出していた。  まさにアルファといった見目麗しい、立派な出で立ちだった。とくにプラム色の澄んだ瞳が印象的で、目蓋に焼き付いている。  間近で見たら、あの透き通った瞳はもっとうつくしく見えるだろう。今日は厳めしい目付きをしていたけれど、おだやかな眼差しのときはどんな顔になるのだろうか。ちょっとだけ気になった。  ノーランの話ではウワサどおりの箱入りおぼっちゃんだというし、まわりにかしづかれて生きてきたのなら気位ばかり高くなるのはわかる気がする。  しかし世間知らずで箱入りのアルファなんて聞いた試しがなかった。 「まぁ俺みたいなオメガがいるんだし、その逆がいてもおかしくはない……のか?」

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