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で、あれば、あの夜のことはどう説明がつくというのだろう?
大通りまで出たジェレミーは、クラヴェルの商館のまえで足をとめた。ひと月ほどまえに視察で訪れたカシウス王子をはじめて目にしたそこで、思い返す。
あの夜、隣家のブロア邸に泊まっていたカシウスと肌を重ねた。
ジェレミーには下心があった。番にはなれなくても王子のお手付きくらいに、あわよくば愛人にでもなれたらいいなという下心を抱いて行為に及んだ。
明確な目的のもとにそうしたのだから、手綱は放さないつもりだった。あらゆる手管を使い、あの〝世間知らずの箱入り王子〟をモノにするつもりでいたのだ。しかし結果は芳しくなかった。
驚いたことに、行為の序盤から自身の身体は快楽に溺れてしまった。あんな経験ははじめてだった。発情期でもないのに秘所は濡れそぼって男の欲望を自ら求めた。
すごく、不本意だった。
まさか自分が我を忘れるほど行為に没頭してしまうなんて。
そのうえさらに不本意だったのが、翌朝その行為の相手から冷たく追い払われたことだった。
カシウスは目を覚ますや否や自身の隣に横たわる男を認めて大層驚き、寝台の端まで飛びのいた。ジェレミーはその拍子に目覚めたが、意識をはっきりさせているあいだにカシウスは数刻前のことに思い至ったらしい。
『な、なんてふしだらな真似を、よくも貴様は……!』
は? と思った。
嘘だろ、とも。
あんだけ好きに注ぎ込んでおいてなにを言っているんだ、この王子殿下は。
まだ眠気の残る頭でそんなことを思っていたら、怒りなのかなんなのか知らないがぶるぶると震えるカシウスはきつくこちらをにらみつけると『出ていけ! いますぐ俺のまえから消え去れ!』と叫んだのだった。
かしこくも世継ぎの君であらせられる王子殿下にそう命じられては退散するしかなかった。ジェレミーはすっかりしらけた気持ちで寝台を降り、マントで身を包むと慇懃に礼をして退出したのである。
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