29 / 37
29.
あれは一体なんだったのだろう。
早々に追い出されたのは仕方ないとしても、行為の快楽に溺れた自分の身体のことが不可解だった。あんなふうになってしまったのが自分だけだったのかも気になる。カシウス王子のほうはなんともなかったのだろうか?
あの夜からすでにひと月以上経っているが、ジェレミーはカシウスとの行為が忘れられずにいた。不意に脳裏によみがえっては胸が疼く。発情期のときと似た熱が胸の奥でずっとくすぶっているようで落ち着かなかった。
――これはもしや、〝運命の相手〟とやらじゃあないのか。
オメガとアルファにはお互い〝運命の相手〟がいるという。番となるべきその相手とはかならず結ばれる運命だとかなんだとか……
たしかめようがないために否定も肯定もできない、いわば迷信のような話だ。とはいえ信じている者は多くいる。ジェレミー自身もなんとなく、どちらかといえば信じているほうだった。
「でもそれならそれで、向こうからなんか言ってきてもいいはずなんだけど……やっぱり無理だったかなぁ」
残念という想いと、やるせない気持ちが胸にわだかまっていた。
最後は冷たく追い払われて、結局褒美ももらい損ねた。結果は散々といってもよかったが、自分に対しきつくにらみつけてきたカシウスの瞳を思い出すとそれらの想いが痛みだす。痛みは日を追うごとに強くなってゆく。
この痛みが癒えるにはもう少し時間がかかりそうだと思うと、ここ最近はため息の数ばかりが増えてゆくのであった。
ともだちにシェアしよう!

