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30.
それからまもなくのことである。
王都から使者がきたとの報せを持って、ノーランがクラヴェル邸に駆け込んできた。
ノーランの話によれば使者はカシウス王子から遣わされた者で、このあいだの視察の際に王子の夜のお相手をした者を探しているらしい。
なにやら城ではその件についてひと悶着起こっているとのこと。
「おまえぇ、うまくやるんじゃなかったのかよぉ!」
ノーランに胸倉をつかまれ、ジェレミーは素直に謝った。
いままで訊ねられても曖昧に誤魔化していたあの夜の顛末もすべて白状した。
「いや……うん、悪い。悪かったよ、すまん」
「すまんで済むかよ。下手したら罪に問われることもあるって言っただろ!? ウチにまで火の粉が飛んできたらどうするつもりだよぉ!」
「まあまあ落ち着け。まだそうと決まったわけじゃない。な? もしなにか問題があるのならもっと物々しい人たちを引きつれてやってくるはずだろ? それが穏便に使者だけ寄越してきたってことはさ……な?」
「な? じゃない、な? じゃ!」
泣きそうな顔で喚くノーランをなんとか宥めつつも、ジェレミーの内心には淡い期待がふくらみはじめていた。
これはやはり、カシウス殿下のほうも俺との夜が忘れられなかったのでは……?
それで俺との再会を望んで、でも周囲に反対されてひと悶着起きたと、そういうことではないのか?
であれば、まだ望みはある。
なにか沙汰が下るのではと心配しきりのノーランには申し訳ないが、ジェレミーの胸は期待にはやった。
王子が自分を探しているというのであれば、行ってやろうじゃないか!
父ダニドに事情を告げると、「持っていけ」というひと言とともにずしりと重い皮の袋を渡された。
片手に余るほどの大きさのその袋の口を開いてみれば金貨がめいっぱい詰め込まれており、「さすが俺の親父」と、ジェレミーは心から思うのであった。
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