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31.
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メールから王都へは馬車で一日半ほどかかる。
街道を抜けて王都に入ると、馬車から眺める城下の街並みは華やかで活気に満ちていた。ここに比べたらメールも田舎に等しいと思える。父と弟と何度か仕事で訪れたこともあるが、目にするたびに圧倒された。
城からの使者は、ジェレミーを粗末には扱わなかった。道中、〝ひと悶着〟の内容が気になって訊ねてみるも、使者自身くわしい事情は把握できていないようで首をかしげるばかり。一応礼儀は尽くしてくれているのでさほどの心配はないようだと思うことにする。
城へ到着すると早速とばかりにカシウス王子の執務室へと連れていかれることになった。案内係のあとに従いながら、ジェレミーは緊張しつつもまだ余裕をもっていられた。
ところが城内に入って空気は一変した。
カシウス王子の執務室へ向かう道すがら、すれ違う者たちの目線はあきらかに侮蔑の色を含んでいた。こそこそと囁かれる彼らの会話から「オメガ」という言葉が聞えよがしに漏れてくる。どうやら問題になっているのはそこらしい。
――まぁここはメールじゃないし、それが普通か。
あらためて自らの境遇に思いを至らせていたら、前を歩いていた案内役の男たちがさっと壁際に避けて頭を下げた。
腕を引かれ、ジェレミーもそれに倣う。
「……匂うな」
向こうからやってきた一団の先頭に立つ男がひとこと、そう口にした。
そのひとことだけでジェレミーは理解した。
アルファの男だ。
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