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「はぁっ!?」  カシウスとヴィドール、綺麗にふたりの声がそろった。  気にせずジェレミーは続ける。  にこにこと、商人の顔をして。 「世継ぎの君にふさわしく、うるわしくも聡明かつ賢明なアルファであらせられるカシウス殿下はもちろんのこと深謀遠慮に長けた側近ヴィドール殿もすでにご存知とは思いますが、アルファにとってオメガの番を持つということは精神の安定にもつながるとの説もございます。となれば、この先殿下にも良き番のお相手様が見つかることを切に願うばかりでございますが、その、世継ぎの君にふさわしい番のお相手様が見つかるまで自分がカシウス殿下の相手を務めさせていただけないか、というご提案でございます。その成果如何によってわたくしの不敬な行いも罪には問わないと約束していただけると非常に助かりますが――いかがでしょう?」  相当な無茶を言っている自覚はあった。  けれど実際、自分が罪を問われずに故郷へ帰るには王子を絆すほか案はないように思われた。  この状況を逆手にとってうまくカシウスに取り入れば罪は不問に付され、もしかしたら報酬をいただける可能性だってなきにしもあらず――そう考えての申し出である。  このジェレミーの口上を聞き、ヴィドールはもとよりカシウスもまず唖然とし、次いでぶるぶると頭を振って憤慨した。

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