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王族や貴族、またそれに準ずる身分の人々のあいだでは、オメガに対する偏見は市井の人々より強く根深い。それは「国を治めるのは優秀なアルファがふさわしく、そのアルファを誘惑するようなオメガは卑しい人間である」という考えが浸透しているためだ。
ジェレミーの提案を受けてふたりがこういった反応を示すのも当然といえば当然である。
「なにをたわけたことを……!」
「いいえ、わたくしは真剣にご提案申し上げております――カシウス殿下」
「……っ!?」
ジェレミーに呼ばれたカシウスがびくりと肩を揺らした。
冷たいばかりだった眼差しに動揺が走っている。
「おそれながら申し上げますが、殿下はこの先オメガと一切接触や交流を持たず城からも出ずに生きていかれるおつもりですか? それが国を治める者の正しい姿だと殿下はお考えで?」
「なっ……そ、それはっ、いや、」
「この城にはアルファとベータの方々しかおられないのですか? たとえばヴィドール殿の御身内にもオメガはひとりもいらっしゃらない? そうではございませんよね?」
ベータに比べたら少ないというだけで、アルファもオメガも決して稀有な存在ではない。
アルファはともかくとしても、オメガの人間をすべて排除してこの世を成り立たせるのは不可能というものだった。
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