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40.
ジェレミーに問われたヴィドールが、愁眉を浮かべた。
カシウスのほうを気にしながらも苦々しく口を開く。
「……いる。妹がそうだ。あれは隠しておけるものではなくてな」
「ええ、そうでしょう。バース性はことさら吹聴するものではありませんが、オメガはその体質の特徴ゆえにどうしても周囲には伝わってしまいます――それで、失礼を承知でひとつお訊ねしますが。ヴィドール殿はご自身の妹御をふしだらで怠惰な者だと思われますか? 発情期の時期に関わらず誰彼と誘惑するような淫売であると?」
「なっなにを無礼な! 代々王家の側近を務める我がミレー家を侮辱するつもりか!? 我が妹に限ってそのような――」
「限って、ではないのです」
「なに……?」
「ヴィドール殿の妹御に限らず、オメガの人間のなかには大変理性的で能力の高い者もおります……いいえ、ほとんどのオメガが自分ではどうすることもできない体質を抱えながら、世間からの冷たい待遇にひたすら耐え忍び、いかに理性的であろうかと心を砕きつつ生きていることでしょう。少なくともわたくしのまわりにいるオメガはいたずらにアルファやベータの方々を誘惑するような不埒な輩はいないといっても過言ではありません」
ただし自分を除いて、とは、心の中でだけ。
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