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第三章 43.
第三章
王城内はおもに三つの区画に分かれている。
国王一家が住まう主塔、世継ぎの君が起居する東の別塔、それに国王直属の近衛兵や城を守る兵士たちの詰所。
このうち、ジェレミーはカシウスのいる東の塔に部屋を用意された。
待遇は悪くなかった。ジェレミーは表向き「クラヴェル商会の頭目の息子がカシウス王子に財政の講義をするため滞在している」ということにされた。そうでもしなければ立たなくてもいい波風が立つかもしれず、そんなことはジェレミーも避けたいので受け入れることにした。
それからジェレミーは、心配しているであろう家族へ手紙をしたためた。事の次第を記し、かならず王子をものにしてみせるとの決意で結ぶ。家族相手になにを書いているんだと若干思ったが、そもことのはじまりがそうだったわけで切っても切れない話ではある。
ヴィドールとは綿密な打ち合わせを行った。報酬の件も忘れずに交渉した。
『報酬だと!?』
『ええ、こちらは家の仕事を放り出してここに滞在することになるのですから、そのぶんくらいはいただかないと割に合わないと申しますか……』
『ううむ、それもそうだな……いや待て。そもそもおまえが殿下の寝所へ忍び込まなければこのような事態になっていないのであって、罪に問わないばかりか報酬まで寄越せとは――』
『ああーいやはやまったくもっておっしゃるとおり。あの夜、わたくしがカシウス殿下に少しでもこころよい夜をお過ごしいただけるようにと忖度してしまったばっかりに。先にヴィドール殿へご確認に参ればよかったものを――えぇっと、それでヴィドール殿はあの夜どちらでなにをしておいでで?』
『おっ、おまえっ、それは……っ、クソ、もういい!』
ヴィドールはカシウスの側近ひとすじなのか、交渉相手としては雑魚に近かった。
世間知らずな王子相手では些細な駆け引きすら必要ないのかもしれない。
根が善良でもあるのだろう。平民の、しかもオメガであるジェレミーに対し高圧的な態度をとることはあっても、先日のニコラウスのように侮蔑の言葉を吐くことはない。
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