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 そんなこんなで城に滞在して六日目の夜、はじめて閨に呼ばれた。  ようやくだ。  このために城に滞在しているというのに六日も待たされたのだから、ジェレミーはわりとはりきって準備を整えた。念入りに身を清め、肌にも髪にも香油を塗り込み、昼間とは異なる装いで着飾って夜更けを待つ。  そうやってやる気満々で準備を終えたものの、いざカシウスの寝所をまえにしたら鼓動が速くなった。  これは果たして期待の表れか、もしくは単に緊張しているだけなのか、それとも――  高鳴る胸の鼓動の理由を考えようとして、やめた。  大事な〝仕事〟をまえにごちゃごちゃ考えるのはよしたほうがいい。ジェレミーはこれまで商人としての経験からそう学んでいた。  ここまできたらなすべきことをなすのみ――気合いを入れなおし、一度深呼吸をして扉を叩く。 「失礼いたします。ジェレミーです」  一拍間を置いて返事が寄越され、入室する。  カシウスはすでに床に入っていた。手に持っていたオイルランプを寝台横のキャビネットに置き、毛足の長い絨毯に膝をつく。彼の瞳と同じプラム色に金の刺繍が施された豪奢な天蓋付きの寝台に、夜闇にも映えるつややかな黒髪が散らばっていた。 「今宵、殿下の思し召しにて参上仕りました。何卒ご慈悲を賜りたく存じます――」  教えられたとおりの文言を口にして待つ。  まわりくどいやり方だがなにかと形式を重んじる方々にとっては必要らしい。  思い返すにブロア邸での自分の挙動はすこぶる無礼だったんだなと、ジェレミーはいまになって反省しきりである。

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