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ジェレミーはそこでようやく自分の格好に気付きポリポリと頭を掻いた。かろうじてジャケットを羽織ってはいるものの、冷やかしと思われても仕方のない格好である。
「あー、失礼。少々事情がありまして――それでその、上から下まですべてそろえていただくには何日くらいかかりますか?」
「……ものによるとしか」
突き放すような物言いに、ジェレミーはくんと顎を上げて老紳士を見上げた。
矜持を固めて形作ったかのようなその横顔に好感を持ち、おもむろに懐から金貨の詰まった小袋を取り出した。磨き抜かれた木製の作業台へどんと置く。
そこからのぞく金貨の鈍い輝きに、老紳士の目の色が変わった。途端にうやうやしく頭を下げ、「大変失礼いたしました。では奥へどうぞ」と案内される。
やはり商売はこうでなくては。
非常にわかりやすい態度にジェレミーは上機嫌で応えた。
思ったとおり、老紳士の手際は非常に洗練されており、真摯な仕事ぶりに感激したジェレミーは正装一式に加えてシャツとジャケットもそれぞれ二着ずつ注文する。
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