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57.
だが、その落ち込んだ気分は、城の自室へ戻ると途端に吹き飛んでしまった。
「……花?」
留守にしていたあいだ、誰かが部屋へと花を届けてくれたらしい。
たおやかな白い花弁を持つその花に添えられていたカードには、ごく簡素な詫びの言葉がカシウスの名とともに綴られていた。
「花なんて贈るんだ、あの人」
なんだか意外な一面を見たようでつい吹き出してしまったが、悪い気はしなかった。
どんな顔でこのカードを書いたのだろうと思えば胸のあたりがあたたかくなる。
アルコールの入っていたジェレミーは気分良くその花の香気を吸い込み、両手に持ったままくるりとダンスの真似事をしてから、はたとその足をとめた。
花を贈られたのなんて、一体いつぶりだろう。
記憶をたどった先、その事実に気付いてふにゃりと力なくへたりこむ。
それから少し、泣きたくなった。
最後に花を贈られたのは、たしかまだ子どものころだ。贈ってくれた相手も幼く、子ども同士ではあるものの、好きな人に花を贈るという意味をお互い理解したうえでのことだったと記憶している。
あのとき以降、誰かから花を贈られた記憶はない。
つまりこの花は、ジェレミーがオメガだと判明して以来はじめて贈られたものであったのだ。
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