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 休息日明けの翌日、いつものように執務室で顔を合わせたカシウスは気まずそうな顔をしていたが、機をみてさりげなく近付き、「お花、ありがとうございました」と耳元で囁けば、そんなに? というくらい得意顔をしたのでジェレミーは笑いをこらえるのに苦労した。  当初は冷たく感じていたカシウスを、このころからジェレミーは徐々に身近に感じ始めるようになっていった。  普段は愛想のひとつもなくきびしい顔付きをしているが、よくよく観察しているとそれが彼の体裁であることに気付く。  たとえば執務中、ふとした拍子に感情が顔に出る。それは驚きであったり困惑であったり、はたまた喜びであったりとさまざまだが、それらが垣間見えた次の瞬間には彼は平静を装ってもとの冷たい眼差しに戻るのだった。  ――そのまんまのほうがいいのに。  ジェレミーはついそんな感想を抱いてしまったけれど、そうも言っていられないのが世継ぎの君というものなのだろう。 『世間知らずの箱入り王子』――自身がそうウワサされているのを、もしやカシウスは知っているのではないだろうか?  それゆえにあのような冷たい態度を強調させて威厳のあるふうに見せている――そうだとしたら、それはそれでかわいらしいと思えた。

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