59 / 133

59.

 その後の数日は何事もなく過ぎていき、城にきて十日目、ジェレミーははじめてカシウスの主催するお茶の席に呼ばれた。  この日のお茶会は遠い東方諸国からやってきた商人たちをもてなす会で、そこに急遽ジェレミーも加えてもらったというかたちだった。  当初は遠巻きに窺うようにしていた東の商人たちは、カシウスが直々にジェレミーへと声をかけると態度を一変させた。  いくつもの国をまわり、各地の貴族や王族らと取引をしている東の商人たちと、この国のいち地方で商売を営むクラヴェルとでは商いの規模が違う。  ここに居並ぶのは貴族と同等の富と力とを持つ者たちだ。ジェレミーは恐縮しきりだったが、カシウスの気遣いをありがたく思いつつ、抜け目なく実家を売り込むことにした。  東の商人たちと話しながらそっとカシウスのほうを見ると視線が合い、それからすぐにそらされた。眼差しはまだ冷たく感じられたけれど、これまでのように突き放す感じではなくなっている。  ほんの少しではあるものの、これも進歩だろう。

ともだちにシェアしよう!