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63.
「……ジェレミー」
「あ、す、すみません。えぇっと、」
ばっちり目が合ってしまい、誤魔化しようがなかった。
カシウスも驚いて目を見開いていたものの、ひとつ息を吐くと講師役の兵に向かって下がるよう手を振ってみせた。
講師役の兵が去ったのを見送り、ジェレミーはおそるおそる声をかける。
「申し訳ありません、のぞき見するつもりはなかったのですが――」
「……いや、いい」
カシウスは言葉少なに応じると、剣を鞘に納めてあずま屋のほうへ向かっていった。
一瞬迷ったけれど、その背中についてゆく。
さっきは気付かなかったが、あずま屋のテーブルには水差しと陶杯が用意されていた。カシウスは自分でその陶杯に水を注いでひと息に飲み干すと、長椅子にどかりと腰かけた。
その彼の額や首筋に、幾筋もの汗が流れる。結構な時間を剣の鍛錬に費やしていたのか、少し息も上がっているようだった。
汗で濡れた黒髪をかき上げるカシウスの姿は、普段城の中で見かける彼よりずっと色気があるように見えて、ジェレミーはぎこちなく視線をそらした。
不敬というより不謹慎だろう。
真剣に剣の鍛錬を積んでいた相手に対し、色っぽいだのなんだの考えるのは。
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