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「あのー、殿下」  このままカシウスの色気にあてられるのを避けるため、ためらいつつも声をかける。  返事のかわりにちらと流し目が寄越され、ジェレミーはぐっとなにがしかを耐えた。 「……っ、殿下はいつもこちらで剣の鍛錬をしておられるのですか?」 「……そうだ。悪いか」 「いっいえ、とんでもない……! でもその、」 「なんでこんな庭の片隅でって?」 「はあ、まあ」  それに今日は休息日だ。  七日に一度の休息日は城の兵たちも日頃の鍛錬を休み、それぞれ余暇を過ごしている。使用人たちだって交代で休みをとっているはずだった。 「鍛錬場では目立つからな」 「目立つ? たしかに殿下が剣の鍛錬においでとなれば見物人は殺到するでしょうね」 「ああ。俺が行けば否が応でもでも目立つし人も集まる。かけなくてもいい手間をかけさせてしまう。剣の鍛錬にそのような手間は本来いらぬはずだ」 「……なるほど」  案外、と言ったら不敬だが、思慮深いカシウスの言葉にジェレミーは素直に感心した。  この国では長く戦は途絶えていて、国王や王子方が自ら剣をとることは滅多にない。  もとより高貴な方々においては剣技など嗜み程度で充分なのだ。それゆえカシウスが剣の鍛錬をしようものなら物珍しさに人は集まることだろう。  だが剣の鍛錬にそういった騒ぎは無論のこと、自身に対する世話なども不要だと彼は言っているのだ。

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