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「……べつに、とって食ったりはしませんよ」
言うべき言葉が見つからず、ジェレミーはわざと冗談めかした物言いをした。
どうも調子が狂う。
生真面目で融通の利かない、なにかと癇癪を起すようなカシウスであれば見慣れているのに。こんなふうにもの憂げな顔をされるとどう対応したらよいのか戸惑ってしまう。
「嘘だ。とって食ったではないか、この俺を」
「あ、そういえばそうでしたね、すみません。……というか、殿下でも俺とか使われるのですね」
「悪いか。俺だって今日は休息日なのだ」
戸惑うジェレミーの内心を知ってか知らずか、カシウスも気安い口調で会話を続けた。
言葉どおり、カシウスは上着も羽織っておらず気取らない恰好で、仕草もどこかざっくばらんとしていた。供の者すらつけていない。
そんなカシウスを見ていて唐突に思い当たる。
この人が普段どれほど気を張って過ごしているのかということに。
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